2020.11.19 日本地域情報コンテンツ大賞・タブロイド部門で2年連続優秀賞

闘病中の患者に「タオル帽子」

気持ちを和らげる一助に

1枚のフェースタオルが縫い合わされ、帽子が完成した。タオル地の優しい肌触りが心地良く、かぶってみるとふんわりと包まれるような雰囲気に心が穏やかになる。
闘病中の患者を元気づけたいと、手作りのタオル帽子を無料で配っているボランティア団体「ぼうしの会」。信州大学医学部付属病院(松本市旭)で活動し11年目になる。帽子は会員が自宅で作り、月1回、病院に届ける。子ども用から大人用までサイズはさまざま。デザインも渋い色柄やパステル色、キャラクター柄など豊富だ。
今年は新型コロナウイルスの影響で思うように活動ができず、直接、患者と触れ合う場も減った。精神的にも肉体的にも苦しい闘病生活を思い、会員はタオル帽子を作り続けている。

手作り帽子で表情が明るく

松本市内の30~70代の主婦ら約10人で活動する「ぼうしの会」。寄付されたり購入したりした新品のタオルでケア帽子を作って毎月1回持ち寄り、検品、採寸、袋詰めをして総合案内や各病棟のスタッフステーションなど院内約15カ所に置いている。サイズは子ども用から大人のLLまで5種類ほど。リクエストにも応えつつ毎月約50個を補充している。
帽子のデザインや形は多彩。「子どもの不安がほぐれるように」とキャラクターが描かれたタオルを用いたもの、「肌への刺激を少しでも減らしたい」と裏地にガーゼを縫い付けたもの、「ずり落ちないように」と頭頂部にマチを設けたもの…。「会員それぞれが患者さんに寄り添う気持ちで作っています」。代表の松本恵美子さん(65、沢村)と、宮坂正美さん(60、入山辺)はそう話す。
同会は2009年に結成。初期メンバーが闘病中の友人に帽子を作ろうとしたことがきっかけだった。がん患者やその家族を支援する市民団体「岩手ホスピスの会」(盛岡市)がタオル帽子を考案したことを知り、型紙を取り寄せて始めた。
会員はその人なりのペースで縫い、見本もあるが作り方は自由。高額な治療費がかかる病気を思いやり、無料配布を続けている。
フェースタオル1枚で気軽にできるタオル帽子は吸水性や通気性が良く、洗濯をして繰り返し使えるのが特徴。抗がん剤の副作用で頭髪が抜けた患者の頭部の保護や防寒、手術で頭部などに傷ができた場合などに役立ててほしいという。
会員の中には自身や家族に闘病経験のある人も。自身が入院した会員は「入浴もままならず髪をばっさり切った。気持ちも落ち込むし、院内で家族以外の人と会うのが嫌だった」と語り、娘ががんを患った会員は「闘病中は楽しい事が一つもない。顔色も悪く心配したが、手作り帽子をかぶると表情が明るくなった」と振り返る。

交流できないもどかしさも

これまでは病棟を回って直接、患者にタオル帽子を紹介する機会もあったが、今年はコロナ禍の影響でできなくなった。また、以前は交流も兼ねて開いていたクリスマス会なども今年は中止に。「新しく入院した患者さんや、本当に必要としている患者さんに届けられていないのが課題」という。
作った帽子を納品した後、誰に選ばれ使われているか確認できないのはもどかしいが、「タオルを買う時からどんな帽子にしようか考える」と作ることを楽しむ会員たち。タオル帽子をかぶって院内を歩いている患者を見かけたり、使用した患者から感謝の手紙が届いたりするのがやりがいになっている。
松本さんと宮坂さんは「地道な活動だが、継続していくことが大切。一つ一つ手作りした帽子が患者さんの気持ちを和らげる一助になればうれしい」。新品タオルの寄付や新たな会員も募っている。問い合わせは信大病院医療支援課tel.37・3176