2020.11.19 日本地域情報コンテンツ大賞・タブロイド部門で2年連続優秀賞

注目の「グリーンウッドワーク」

コーンコーン…。朝日村の緑のコロシアムに木を割る音が響く。訪れる冬に備えた薪づくりではなく、椅子を作る作業だ。
乾燥していないみずみずしい生木を、電動工具や大型工作機械を使わずに暮らしの道具に加工する「グリーンウッドワーク」。欧米発祥で、近年、日本でも注目を集めている。
ホームセンターなどで売られている乾燥・加工済みの木材ではなく生木を使うため、時間がたつと乾燥して縮んだりゆがんだりはするものの、身近にある木で手軽に木工ができるのが特長だ。そんな古くて新しい、グリーンウッドワークの作業をのぞいてみた。

木の良さ伝え里山に親しみを

苦戦しつつも味あるものに

朝日村の緑のコロシアムで10月末に開かれた催し「グリーンウッドワークin朝日村~生木からスツールを作ってみよう~」。この日の講師は、朝日村家具連絡協議会に所属する家具職人ら5人で、子どもも含め14人が参加した。
昨年の台風で倒れたという杉の丸太を、万力(まんりき)と木づちで割る作業からスタート。椅子の座面と脚の部品を取れるように線を引き、それに沿って割っていく。スパっと割れる所もあれば、節で引っかかったり、木目に沿って曲がったりする所も。「自然の物だから、真っすぐにはいかない。それも味」と、苦戦しつつも楽しみながら、割っていく参加者たち。
板状になったところで「削り馬」に固定して、「銑(せん)」と呼ばれる大工道具で削って形を整える。「生木だからか、柔らかくて意外に削りやすい」「どこまでやっていいか分からない」と参加者たち。それぞれのパーツが出来上がると、それらを組み合わせ、高さを調整して出来上がりだ。
早速、座り具合を確かめたり写真に撮ったり。上松町から参加した佐々木将さん(47)は「思うように削れなかったけれど、それが味かな。次はあれに挑戦したい」と、指導者らが作った「ゴッホの椅子」を指さした。

循環型の社会考える契機に

グリーンウッドワークは、森から伐採したばかりの乾燥していない木を、伝統的な手工具を使って割ったり削ったりしながら小物や家具を作るものづくりを指す。山や庭木の手入れで切った木など、どんな木でも材料になる。乾燥のためのコストもかからず、大型機械も使わないので子どもから高齢者まで楽しめ、木を伐採した森や公園など加工場所を選ばないのも利点だ。
この日の催しを主催した同連絡協の谷口泉会長(61、針尾)は10年以上前から、村産カラマツの間伐材を使って学校の椅子を作るなど、木の良さを伝え、山の木に目を向けてほしいと活動を続けている。人が山に関心を持ち、近づくための一手を探していた昨年10月、山梨県の河口湖で開かれたグリーンウッドワークの体験教室に参加。「これだ」と直感した。
仲間に呼び掛け同連絡協を設立。道具をそろえ、今年の8月末と9月中旬にはNPO法人グリーンウッドワーク協会から村に指導員を招いて「講師養成講座」を開き、14人が受講。「ゴッホの椅子」はその際に作った。その翌週には谷口さんらが講師となって一般の人に参加を呼び掛け、スツール(背もたれのない椅子)作りの催しを開催。定員10人に対し倍以上の申し込みがあったため、初回に受講できなかった人を対象に2回目も開いた。
「生木でものづくりができるということが分かれば、人々の木を見る目が変わり、里山に親しむきっかけにもなる。循環型の社会を考えるきっかけにもなれば」と谷口さん。催しが人気を集めていることについては「これまで効率一辺倒だった世の中が、コロナ禍を機に、一から自分の力でできることに目を向けるようになってきているのかも」と話す。
森林面積が87%を占める朝日村。谷口さんは、グリーンウッドワークをグリーンツーリズムなどの観光資源として生かしたり、村民の農閑期の作品作りなどに役立てたりできればいいと考えている。