2020.11.19 日本地域情報コンテンツ大賞・タブロイド部門で2年連続優秀賞

郷土料理「おやき」朝食にいかが? 高峯・吉江さんの挑戦

新しいおやき文化を広めたい

モーニングおやき、いかがですか?
1946(昭和21)年創業で、3代目おかみの吉江弘美さん(54)が切り盛りする松本市巾上のおやき店「高峯」。喫茶店などでおなじみのモーニングセットとして、信州が誇る郷土料理のおやきとコーヒーを組み合わせたメニューを10月から提供し始めた。
具も、野沢菜、カボチャ、切り干し大根などオーソドックスなものに加え、山賊焼き、くるみ、あんバター、ネギとひき肉、ずんだ(枝豆をすりつぶしたあん)など多彩な種類を開発した。
新しいおやき文化を広めたいと、通販やSNSも活用。日本人だけでなく外国人にも受け入れられる「OYAKI」を目指し、ユニークな具の開発にも引き続き力を入れる。

病気で倒れた叔母 経験ゼロで店継ぎ

「高峯」のおかみ、吉江弘美さんが、病気で倒れた叔母から同店を継いだのは2002年。「おやきは作ったことがない」というゼロからのスタートだった。さらに当時は、小学校4年~中学2年の3人の子育ての真っ最中。病気の叔母の面倒もみながらという大変な中での決断だった。
従業員に作り方を一から教わった。子どもを送り出した後、午前7時には店に入り、午後5時までほぼ立ちっぱなし。「よく倒れなかった」と振り返るが、やめるという選択肢はなかった。「受け継いだからには、店を守りたい。そしてさらに広げていきたい」
当時のメニューは野沢菜や切り干し大根など素朴で昔ながらの具材で、これといって特長はなかった。一方、皮は弾力があってもっちりしており、そこに可能性を感じた。「具材を多彩にしたら幅広く受け入れられるのではないか」。松本独特の「城下町のおやき」を目指して研究が始まった。
自信作の一つが、ご当地グルメの山賊焼きを使った「山賊」。味付けに野沢菜のタルタルソースを交えたところ、さらにこくが増した。「ピリ辛マヨきゃべつ」は中高年が好みそうな味を意識。あんバターは、ふかすとバターが噴き出すなどの苦労の末、開発に成功した一品だ。

コーヒーと相性◎ モーニング提供へ

モーニングおやきは、おやきとコーヒーの相性が意外にいいことを知り、おやきを朝食として定着させられないか|と着想した。メニューの名前も「モーニングおやき。」とし、好きなおやきとコーヒーのセットで350円。コーヒーとよく合うあんバターのおやきが人気という。
開店時間も1時間前倒し、午前7時半に早めた。自身も2時半~3時に安曇野市豊科の家を出発。4~4時半に仕込みを始める。午後4時に閉店、後片付けをして家に戻って掃除洗濯、食事の支度と、目が回るような忙しさだ。効率的に時間を使うため、「アイラインは消えにくいように、油性マジックにした」と笑う。
6月には4個入りのおやき1000セットを無料で配った。「コロナ禍で沈む地域を、おやきで元気にできれば」と吉江さん。自身も、常連客からの「おいしい」「頑張ってね」との声がエネルギー源になっている。

ネットも積極活用 裾野拡大目指して

世界の「OYAKI」に向け、ネットも積極活用する。YouTuberの大西祐次郎さん(45、松本市梓川倭)と連携し、吉江さんが街を歩いたり、賄いを作ったりする動画もアップ。「おやきをアピールしたいと思いながら、おかみの天然ぶりを面白おかしく紹介している」。始めて1カ月で約500人のフォロワーが付き、年内には1000人に達しそうという。
インスタグラムなどSNS(会員制交流サイト)でも発信。その成果か、従来の来店者はほとんど高齢者だったが、20~40代の層が3割を占めるまでになった。県外から通販の発注も増えている。
朝ご飯に、おつまみに、おやつに、お土産に、いろいろな用途に合ったおやきの開発に力を入れる。スタッフや大西さんとアイデアを出し合い、「割ったらチーズがとろりと出たらいい」「クリスマス用にステーキを使ってみたら」といった意見が出ている。他店とのコラボレーションで豚肉の角煮を使うアイデアも。
「夏向けに『冷やし生おやき』ができたら面白い」と吉江さん。今後もユニークなおやきが増えそうだ。日曜、祝日定休。高峯 電話32・3422