2020.11.19 日本地域情報コンテンツ大賞・タブロイド部門で2年連続優秀賞

ガラス作家活動本格化 井之下翔さん

松本市並柳の井之下翔さん(29)が、ガラス作家としての活動を本格化する。これまで軽井沢町の工房で従業員として働くなどし、「いつかは独立」と夢を持ち続けてきた。仕事と掛け持ちしながら技術を磨き、12月から1年間、先輩作家の工房で学ぶことに。次のステップに意欲を燃やす。

「作るのがとにかく楽しい」

現在は軽井沢町の工房に定期的に通い、作品を作っている。10月のある日は花器などに取り組み、溶解炉の熱気と音の中、熱したガラスを吹いたり、たたいたりして器に。「作るのがとにかく楽しい。ガラスの世界から抜けられない」と笑う。
幼いころから、川の石を集めて色を塗ったり、昆虫採集をして標本を作ったりするのが好きだった。田川高校(塩尻市)を卒業後、富士見町にある装飾美術の専門学校で陶芸や木工、ガラス工芸などを学び、「制作に動きがある。機械の音もにぎやかで好き。火を見ていると元気が出る」とガラスを選択。軽井沢町の工房に就職した。
主に観光客向けの、制作体験のインストラクターを8年間務め、2017年には安曇野市で開いた「そば猪口(ちょこ)アート公募展」(市や東京芸術大など主催)に出品し、準大賞に選ばれた。しかし、作家になるビジョンが描けず昨年9月に退職。松本に戻り、食品製造工場に勤めた。
いったんは作家になるのを諦めかけたが、「やれることからやってみよう」と仕事の傍らギャラリーに通い、今年の「クラフトフェアまつもと」出展に初めて応募し、審査を通った。

作品展などの交流でやりがいも

クラフトフェアはコロナ禍で中止になったが、出会った作家の紹介で、自作をギャラリー「グレイン・ノート」(松本市中央3)で委託販売できるようになり、作品展やイベント出展の機会も巡ってきた。客と交流する場ができ、「作品を褒めてくれる人が現れ、やりがいも感じるようになった」という。
作家として、自分の工房を持ちたい―。その一歩目として今月で仕事を辞め、先輩の作家が開いた静岡県熱海市のガラス工房で来月から、経営を中心に学ぶことにした。
目標は「特別な料理や酒を味わう時は、この器で」と思ってもらえる作品を作ること。「普段使いの器を作りながら、自分らしさを表現する器にも挑戦していきたい」と話す井之下さん。すでに作家の雰囲気が漂っている。