2020.11.19 日本地域情報コンテンツ大賞・タブロイド部門で2年連続優秀賞

酒を愛する個性派リンゴ農家・宮本さん

そり上げた頭にサングラス、金色のひげ。のどかな農園にそぐわない怪しげな姿だが、実はリンゴ農家だ。
みやもとファームの宮本清さん(43、安曇野市三郷明盛)。12年前に埼玉県から移住、リンゴ農家として独立して8年がたつ。現在は160アールの畑で15種を栽培。独自の減農薬農法で、おいしいリンゴを追求し続ける。
アルコールをこよなく愛し、日本バーテンダー協会にコムラード会員(一般の人が加入できる会員)として名を連ねる。10月には、自身が作ったリンゴを使ったクラフトビールも完成した。
手をかければかけただけ結果が残り、やりがいがあるというリンゴ栽培。「自然に囲まれ、おいしいお酒がいっぱい」ある信州暮らしを満喫している。

工場勤務から転職信州農業の世界へ

収穫期を迎えたリンゴ農家が忙しい。「今年は気候も良く、甘さも乗っている。収量的にも一番いいんじゃないかな」。みやもとファームの宮本清さんは満足げに話した。
埼玉県に住んでいた頃は自動車の部品工場に勤め、生産管理などを担っていた。海外輸出も多く、工場は24時間フル稼働。多忙を極め、精神的にも身体的にも相当なストレスを抱え胃腸炎を患った。「これでは体がもたない」。仕事を辞め、就活をしていた時、県の就農相談会に参加し、信州農業に魅力を感じた。
「農業ってどんなもん?」。疑問を抱えつつ、自分で農業のアルバイトを探し、未知の世界に飛び込んだ。飯田市でリンゴ、柿、米の栽培、野辺山高原では白菜の栽培を経験し、農業の面白さに気づいた。「1人でできるところがいい。会社で働いていた時は管理され、やることが決まっていた。農業は自由にできるところが魅力」。趣味のバイクで何度も訪れていたことも、信州での就農を後押しした。

徐々に品種増やし農薬散布極力抑え

たわわに実った信州のリンゴ畑の風景に感動し、安曇野市のリンゴ農家で研修。2012年に遊休農地を借りて独立した。当初の耕作面積は70アールで品種も「ふじ」と「つがる」だけだったが、徐々に畑を広げ、今では160アール、15品種を栽培。シナノスイート、シナノゴールドのほか、シナノピッコロやシナノプッチ、スリムレッドといった小ぶりの品種も手掛けている。
「少人数の世帯では大玉はもてあます。核家族や1人暮らし向けの小粒な品種にも力を入れる」と宮本さん。最近は、果肉にピンクのグラデーションが入るムーンルージュも植えた。
農薬の散布は極力抑える。「病原菌は見えないので怖い」といいつつ、体にも環境にも優しい農業を目指す。「農薬代もばかにならないしね」
2、3年前から、ようやく利益も出始めた。JAへの出荷だけでなく、さまざまな販路も模索する。行きつけのBacca麦香ブルーイング(松本市巾上)が、自分の畑で取れたシナノドルチェを使って「アップルエール」を造り店で提供。今季分は既に売り切れたという。
ふじ、グラニースミスなど7種類のリンゴのジュースを委託して作り、飲食店に卸している。
酒が大好きで、松本のバーにも出掛ける。畑では1人で黙々と仕事をこなす反動で「マスターと話ができるのがいい」。家の台所にも多くのアルコール類が並び、自分でシェーカーを振ったり、ステアしたり。バーテンダー協会「会員」の本領を発揮する。
体を動かすこと、外で働くことが大好き。「飲食店を出したら」と勧められることも多いが、農作業だけで手いっぱい。農業はまだ緒に就いたばかり。収量や品質、販路の確保など課題は多い。
おいしいリンゴ作りとともに抱くもう一つの夢は、自身のリンゴでシードルを造ることだ。「酒が好きだからね」。見た目が異色のリンゴ農家は、全く異なる世界から飛び込んだ信州農業の世界を、愛猫2匹と一緒に楽しんでいる。
宮本さんへの問い合わせはメール(azumino-miyamotofarm@ae.auone-net.jp)で。