石川醫院・石川晶三院長に聞く-漢方薬の使い方と風邪

自然界の植物や動物などの薬効成分を組み合わせてつくる漢方薬。自然治癒力を高めるといわれ、医療現場でも使われています。コロナ禍の中、例年以上に心配になる風邪。流行期を前に、漢方薬処方の症例を著書にまとめるなど、この分野に詳しい石川醫(い)院(松本市島立)の石川晶三院長に風邪についてや、漢方薬の使い方などを聞きました。

風邪はウイルスによる上気道の感染症

風邪とはウイルスによる上気道の感染症のことです。上気道は空気が肺に入るまでに触れるところで、どこが主にやられるかによって、喉型、せき型、鼻型に分類されます。
新型コロナウイルス感染症で国から「発熱したら3日間は自宅で様子を見て」という方針が出ました。発熱の原因が普通の風邪ならゆっくり休めば自然治癒するからです。
風邪の原因となるウイルスは200種類ほど。その中で抗ウイルス薬があるのはインフルエンザだけなので、治療は解熱鎮痛剤で発熱、頭痛、関節痛などを軽くする対症療法が中心。ウイルスの除去は自然治癒に委ねています。

漢方薬は消化器を温めて自然治癒力を支える

漢方薬は消化器を温めて元気にすることで自然治癒力を支えます。人体を表と裏でイメージしてください。表はおおむね皮膚や喉、鼻腔(びくう)、裏は内臓です。漢方の世界で風邪の原因は「外邪(がいじゃ)」といいます。これには、ウイルスや、寒さを原因とする「寒邪(かんじゃ)」などが含まれ、これらは表から侵入しようとします。その際、悪寒、頭痛のような症状が出ます。体が外邪を中に入れないように闘っている状態です。これが「表証(ひょうしょう)」です。
風邪のごく初期、悪寒がして発熱してくる時に飲む漢方薬が「葛根湯」。湯飲み1杯くらいのお湯に溶いて飲むのが効かせるこつ。その後、温かいみそ汁やおかゆを食べて布団に入り、背中にうっすらと汗をかいたらこの漢方薬の役割は終わりです。体力がある人は表で外邪を撃退して風邪は治ります。
一方、胃腸虚弱などで体力がない人は表で防ぎきれず裏まで侵入してしまい、食欲低下、腹痛、下痢のような消化器症状が出てくる。この状態が「裏証(りしょう)」です。
頭痛などの表証を残しながら吐き気などの裏証が出てきたら「柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)」を使います。食欲低下、腹痛、下痢といった消化器症状が出てきたら「人参湯(にんじんとう)」、さらに、倦怠(けんたい)感が出て、下痢でも水のような不消化便になってきたら「真武湯(しんぶとう)」がいいでしょう。
風邪にかかりにくい体をつくるためには消化器を元気にすることが大切。外邪と闘う表が温かく潤っているためには、裏の消化器から熱や水分を配給しないといけません。
冷たい食べ物を食べると、胃は消化できる温度に温めるだけで疲れます。風邪をひいたら体を温める食材を取りましょう。
過剰な水分摂取も胃腸を弱めます。「1日2リットルの水を飲むと健康になる」というのは万人向けの健康法ではありません。足が冷える、浮腫がある、下痢をしやすいという人は過剰な水がたまる「水毒」になります。
服装は足首を保温しましょう。寒邪は体の下、つまり足から侵入します。足首の動脈の血を冷やさないようにすることが大切です。

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