シニアの就労 課題と現状

定年後も、元気なうちはまだまだ働きたい!でも、その一歩が踏み出せない─。そんなシニア世代も多いのでは。少子高齢化による労働力不足が懸念される中、松本市生涯現役促進協議会がシニア向けに開いた就労セミナー(介護・福祉編)と「お仕事交流会」などを取材し、高齢者が抱える就業の課題や現状をまとめた。

高い意欲生かせる場を

【松本市生涯現役促進協議会※・遠山順次事業統括員】
内閣府が全国の60歳以上の男女計3000人を対象に今年1月に聞き取った「高齢者の経済生活に関する調査結果」によると、8割以上が高齢期にも収入を伴う仕事をしたいという高い就労意欲を持っていることが分かる=グラフ1。
仕事をする主な理由は、「収入が欲しいから」が45.4%で1位。次いで「働くのは体に良いから、老化を防ぐから」が23.5%、「仕事そのものが面白いから、自分の知識能力を生かせるから」が21・9%と続く=グラフ2。
働く高齢者が年々増える一方で、「働きたいが、働いていない高齢者」の割合も増えている。高齢者が地域社会で安心して働けるように多様な価値観に基づく新たな雇用創出が必要だ。

※松本市生涯現役促進協議会
昨年4月に設立。働く意欲のあるシニア世代と採用を検討する企業や団体を結び付け、シニアの生きがいづくりと活躍の場の創出を目指している。相談窓口は、市勤労者福祉センター内事務局℡0263・88・5955

【松本市社会福祉協議会・高山満常務理事】
どの施設でも介護に関わる人材不足が深刻だ。しかし、介護のマイナスイメージが先行して、なかなか人が集まらない。職員数が減るとそれだけ充実した介護サービスを提供することができなくなる。結果的に利用者も減り、事業が成りたたなくなってしまう。
専門職には資格が必要だが、資格がなくても送迎の運転手や食事の調理員、有償ボランティアなどシニア世代の活躍の場はたくさんある。が、あまり知られていないのが実情だ。地域の新たな担い手として、これまで培ってきた知識や経験を福祉の現場でも生かしてほしい。
市社協では、家事やペット支援など1時間当たり800円の報酬が得られる有償生活支援事業「つむぎちゃんサポート」を独自に行っている。10月末現在、支援を受けたい利用会員は499人、支援する協力会員は236人で、本年度はこれまで延べ1630人が利用した。
支える側の協力会員が少ないのが課題。報酬は発生するが、ボランティア要素が強く、収入として大きく稼ぐことは難しい。ただ、多くの人に喜ばれるので、やりがいや満足度は高く、生きがいづくりにもつながっている。

【ハローワーク松本・戸谷謙一統括職業指導官】
「生涯現役支援窓口」を所内に設け、60歳以上の就職希望者に担当者が付いて個別に支援し、シニア世代の雇用促進に力を入れている。
現役時代、仕事一筋でやってきた人が多いので、65歳以上はフルタイム勤務よりも時間にゆとりのあるパートタイムを望む人が多い傾向だ。
コロナ禍で4月以降、求人が減り、今まで主にシニア世代が担っていた軽作業の求人に、若い世代が押し寄せてくるなど競争率が上がっている。シニアにとっては厳しい現状だ。
求職者は多いが、ウイルス感染の収束が見えない中、外に出て働くことをちゅうちょしている高年齢者も多く、行動まで一歩踏み出せない人もいる。
人手不足の中、新たな担い手としてシニア世代の力は今後ますます社会にとっても必要になってくる。いかに情報を共有発信し、シニアの働く意欲を喚起していくかも大事だ。