信大附属小6年生ら「特別」な年の思い詰まったライブ

「この年の6年生で良かったと思えるように─」
11月26日、信州大学教育学部附属松本小学校(松本市桐)に、普段はないバンドの音楽が響いた。15分間の休み時間を使った中庭ライブ「附属レボリューションズ繋(つなぐ)~歌おう、ボクらの歌」。6年生がエレキギターをかき鳴らし、マイクを手に熱く歌った。
新型コロナウイルスに振り回され、行事は例年通りにいかず全校での集まりもない「特別」な1年。「こんな年に最高学年で、ついてなかったと絶対に思ってほしくない。楽しいことを考えて実行することの大切さを伝えたい」。そんな思いが詰まった「特別」な中庭ライブ。バンドメンバー以外の6年生全員が、熱い演奏に合わせてダンスではじけた。

教員・保護者児童で構成「附属レボリューションズ」
コロナ禍…「今できることを」

「職員室には先の見えない不安、子どもと関われないもどかしさ、何もできなくても6年生は卒業させなければいけないという焦りがあった」。大野征二副校長(52)は、2020年度の始まりをそう振り返る。
そんな閉塞感を払しょくしようと中庭ライブを考えたのが、ともにギターが趣味の大野副校長と、学校にエレキギター4本とベースギター1本を寄付したPTA副会長の小畑啓さん(47)だった。
「どんな状況でも工夫次第で楽しめることを、まず自分たちが見せよう」。7月、休み時間の中庭でゲリラライブを決行した。小畑さんのギター、大野副校長のベース、ボーカルは合唱部の教諭だ。人気ロックバンド「ヨルシカ」の曲「負け犬にアンコールはいらない」を演奏すると、児童たちは大興奮。10月の2回目は、ベースに保護者の柴田裕一さん(47、惣社)が加わり、ライブの後で6年生にギターとボーカルを募った。
「特別」な年への対応を試行錯誤してきた学校。登校がいつ再開してもいいように時期の異なる年間行事予定を4パターン作り、教員がパーソナリティーを務めるラジオ番組も作って配信。子どもたちからの便りを読んだりリクエスト曲をかけたりと、学校、子ども、保護者のつながりを大切にしてきた。

思い出づくりアイデア次第

分散登校を経て6年生全員(2クラス、67人)がそろった6月。友達との再会を喜んでいた児童だが、例年やってきたことがほとんどできない状況が続くと、担任の上條大樹教諭(43)は子どもたちの間に「いいな、去年は…」といった雰囲気を感じたと言う。
「できないことを嘆くより、今できることに最善を尽くそう」と言い続けてきた大野副校長。「授業時数の調整は何とでもなる。問題は気持ち。教師としての誇りというか意地みたいなものがあった」と話す。
学年別に行った運動会では組み体操をダンスに変更し、振り付けはプロダンサーに助言を受け、子どもたちが喜ぶ今どきのものに。児童のアイデアから生まれた「繋」の一字を書いたおそろいのTシャツを着て踊った。「どんな状況でも楽しみを作り出すアイデアがあれば全てが思い出になる。そうした考え方が子どもたちに浸透していった」と上條教諭。
募集の呼びかけに手を挙げた児童は、エレキギター、ベース、バイオリンが計6人とボーカル4人。ギターを触るのもコードを見るのも初めての児童がほとんどだった。演奏しない児童からは「他の学年にも運動会のダンスを見せたい」との声が挙がった。曲目は人気アニメ「鬼滅の刃」の主題歌「紅蓮華」と、ダンス曲「ただ君に晴れ」に決まった。
ライブ当日、躍動する6年生の姿に、目を輝かせて思わず前へ出てしまう1年生や、紙で作ったギターで一緒に演奏のまねをする児童も。「短い期間に練習してよく弾いてくれた。みんなが楽しんでいる雰囲気に見入っちゃいました」と小畑さん。息子と2人でベースを弾いた柴田さんは「コロナ禍がなかったらこの発想は生まれなかった。子どもたちといい時間が持てた」と喜んだ。
人前に出るのは苦手という樋口陽向さん(12)は、触ったこともないギターを毎日欠かさず練習。「かなり勇気がいったし、難しかったけど、自信を持って笑顔でできた。不自由なことはあるけれど、それなりの環境の中で精いっぱいを尽くしている。今日もやりきった」と満足そう。
「その時々を、その人らしく楽しみ、互いの個性を認められる、自慢の6年生。これからもきっと何かやってくれると期待している」と大野副校長。学校は今後も、この中庭を子どもたちの「楽しみたい」「発表したい」を実現できる場にしていく予定だ。