あさひプライムスキー場 伝説のレーサーら再建に立ち上がる

冬期、朝日村の顔として雇用やにぎわいに貢献してきたあさひプライムスキー場。存続の危機を乗り越え、急ピッチで準備が進む。
新指定管理者「タジマモーターコーポレーション朝日」は、スキー場だけでなく、キャンプ場やコテージといった施設も一括管理。複合的な観光レジャー産業の構想を描く。
「タジマモーターコーポレーション朝日」の社長は田嶋伸博さん(70、東京都)。モータースポーツ好きなら知らない人はいない。アメリカのヒルクライム(山登り)レース「パイクスピーク」の日本人レーサーといえば、真っ先に名前が挙がる。
そんな田嶋さんが目指すのは「クリーン&グリーンを念頭に、5年、10年先を見据え、村人たちと一緒につくる他に例のないリゾート地」だ。

新指定管理者に3社共同事業体

松本平の身近なスキー場として親しまれ、小学生や障害者の教室なども多く受け入れてきたあさひプライムスキー場。昨季まで経営を担ってきた指定管理者が撤退、一時は営業休止が決まりかけた。
「スキー場がなくなると村に来る人が減ってしまう。『残してほしい』『何かできることはないか』といった声も多い」。スキー教室の開催やパトロールといった活動をしてきた住民グループ「あさひスキークラブ」などが危機感を持ち、存続に向け署名活動や陳情などをしてきた。
そんな中、同クラブと面識があり、輸入販売やまちづくり事業の他、爺ガ岳スキー場の運営にも携わる大町市の企業「フリーフロート」代表の屋田翔太さん(35)が、田嶋伸博さんに相談したことで事態が動いた。
「株式会社タジマモーターコーポレーション」「株式会社フリーフロート」「大町温泉観光株式会社」の3社共同の事業体「田嶋モーターコーポレーション朝日」として、スキー場など観光レクリエーション施設の指定管理者に応募。審査会を経て2024年3月までの指定管理が決まった。
田嶋さんが会長兼社長でCEOの「株式会社タジマモーターコーポレーション」は、自動車のディーラーや電気自動車の開発など幅広い事業を展開。自身も「未来の子どもたちのために、美しい地球を残したい」と発足した電気自動車普及協会代表理事の顔も持ち、電動降雪機の導入なども視野に入れる。

雪がなくても楽しめる場に

「あるものは活用し、ないものは作ればいい」と田嶋さん。コテージやスキー場の施設などには、高濃度オゾンによる除菌システムを活用するなど、コロナ対策も含め次々に着手している。
「雪がなくても楽しめる場所にしたい」と、キャンプ場やコテージなどと一体で「あさひバレーリゾート」として整備。村の自然や施設を生かしてグリーンシーズンの誘客も図る。
トレイルランニングやeスポーツなど、現実とバーチャルリアリティー(仮想現実)の双方を楽しみながら子どもたちが頭と体を鍛えたり、テレワークしたりできる環境整備も構想。透明ボードの仕切りなど3密対策を施した電気自動車「TAJIMA|NAO」や電動小型車の導入で、排ガスのないクリーンな観光地づくりも目指している。

モーターレース界で「モンスター」の異名を取る田嶋さん。1986年、村キャンプ場奥の林道で、開発中のレーシングカーのオフロードテストの撮影をしたのが朝日村との縁の始まりだ。発売前で撮影は極秘だったが、「快く受け入れてもらい、当時とてもお世話になった」。
屋田さんから持ち掛けられた指定管理者の相談。田嶋さんは「スキーには全く興味がなかったが、そちらには専門家がいる。こちらはメンテナンスや経営に詳しい」と快諾。「世話になった恩返しも兼ね、仕事を超えた情熱を向けている」と笑う。
「地元の人に思うところがあれば遠慮なく言ってもらい、一緒にやっていきたい」。そう話す屋田さんと田嶋さん。「あさひバレーリゾート」の鈴木宏幸支配人(44)とともに構想実現に向け動きだした。
村も地域住民との意見交換を行うなど、連携していく考え。あさひスキークラブの一村孝行会長(66)は「クラブでも応援し、一緒に盛り上げていきたい」と期待を寄せている。