霜月から師走への2日間を追う 初冬の光彩

肉眼では見えにくいが、撮影すると左上側が暗く右下側が明るいグラデーション状態になった半影月食の満月がはっきり浮かび上がった=11月30日午後7時5分、松本市神林

霜月から師走への境目の11月30日に天体ショー「半影月食」、翌1日に月明かりに浮かび上がる北アルプスと、美ケ原高原の美しの塔を抱くように昇る朝日、小春日和の里で咲く「十月桜」の撮影に臨んだ。季節が本格的な冬へと足早に向かう中、多彩な表情を見せながら通り過ぎる自然のドラマチックな姿を紹介する。

【半影月食の天体ショー】
半影月食とは、月が「半影」と呼ばれる地球の薄い影に隠れ、一部が暗く見える現象。30日宵、松本市神林から英語圏で「ビーバームーン」と呼ばれるこの時期の満月が昇るのを待った。覆われていた東の山際の雲が徐々に晴れ、午後6時43分の食の最大時刻に合わせて撮影を開始。肉眼では食部分が見えにくい。1200ミリの超望遠レンズを付け、明暗がはっきりした満月を捉えることができた。
月の模様を「餅をつくうさぎ」に見立てると、顔部分の「静の海」から胴体部分の「雨の海」にかけて左側上部が暗い。一方、「ティコ」と呼ぶ大きなクレーターがある右側下部が明るい。月がはっきり欠けて見える本影食とは違った風情だった。
【満月が照らす真夜中の光彩】
1日午前1時の美ケ原高原王ケ頭。半影月食を見せた満月が日付を越えて煌々(こうこう)と輝く。雪の北アルプスの山並みが月明かりで鮮やかに浮かび上がり、眼下の安曇野の夜景が彩りを添えている。幻想的な真夜中の光彩に魅せられ、撮影は午前2時すぎまで続いた。
【サンライズ・美しの塔】
美ケ原のシンボル「美しの塔」を抱いて昇る日の出は、神秘的である。
1日午前6時、氷点下8.1度の撮影地点に立った。塔までの直線距離は、約2.3キロ。霧に隠れ、塔が見えない。カメラを構え、ひたすら待った。
6時52分、幸運にも黄金色に染まる霧が移動し、大きな太陽が昇り始めた。草原の大地から湧くように力強く昇る“火の玉”が美しの塔を浮き上がらせ、通り過ぎた。
【癒やしの十月桜】
小春日和となった1日午後2時。松本市神田の千鹿頭神社入り口の鳥居横にある3本の八重咲きの十月桜が咲き、師走の日差しを浴びて癒やしの風情を漂わせていた。
スマホ撮影に訪れた市内の女性(48)は「コロナが心配だから帰らない」と伝えてきた東京在住の大学生の娘に「今夜この桜の画像をラインで送る」と話した。
十月桜は、エドヒガンとマメザクラの交雑種のコヒガンザクラを原種とし、江戸末期に作られた園芸品種。4月と晩秋から初冬にかけ咲く。
(丸山祥司)