バー再開業へ紆余曲折 対策十分初ライブは竹原ピストルさん

塩尻発ライブで街を元気に

アコースティックギターをかき鳴らす音、野太い歌声。ビンビンと伝わる熱気。皆、この時が来るのを待っていた。
今月11日、人気ミュージシャンの竹原ピストルさんがステージに立った。場所は塩尻市広丘高出の「バー On the Road&喫茶路上」。同市大門でライブバーとして名をはせたが、今年3月に閉店。紆余(うよ)曲折を経て業態変更し、6月に再オープンした。
新型コロナの感染拡大で、ミュージシャンは人前での演奏活動を休止、全国各地のライブハウスの困窮も伝えられた。そんなさなかに同店を開業したママの米窪直美さん(50)が、ミュージシャンやライブファンの思いを受け止め、感染対策を徹底して開いた初ライブをのぞいてみた。

空間共有の喜び

竹原ピストルさんが立つステージと3メートル離れた観客席に、マスクの上にさらにフェースシールドを付けた観客ら13人が、距離を取って座っていた。
国の感染対策のガイドラインに沿い、観客は客席の半数に、来場者には接触確認アプリのインストールや問診票の記入、検温を義務付けた。ライブは収録して、動画配信サイト「ツイキャス」で同時配信。全国で100人余りがこの夜のライブを楽しんだ。
会場を盛り上げる大きな声援はご法度。歌と拍手で粛々(しゅくしゅく)と進んだライブだが、アーティストと空間、時間を共有できた喜びに会場は満ちていた。
バーの常連で、竹原さんファンの保科昌幸さん(47)は「この規模で聴けるとは、感無量。万全な対策で、心配なく聴けて良かった」。山田由美子さん(55)も「ライブ自体久しぶり。この大変な時期に気を使いながらも開いてもらえてうれしかった」と笑顔を見せた。

口コミで人気に

ママの米窪直美さんが塩尻市大門で「バー On the Road」を開いたのは2010年。「当時は塩尻にバーもライブハウスもなくて。女性も気軽に足を運べるバーを作りたかった」
当初は客足も芳しくなく、女性がバーを経営することへの風当たりもあったと話すが、徐々に軌道に乗り、年間延べ6000人以上が訪れる店に成長。30席の席数を、従業員を雇わず毎晩1人で接客してきた。元々音楽が好きで、店名も歌手の浜田省吾さんの曲名から取った。売り上げや客からの寄付をこつこつため、徐々に楽器や機材をそろえていった。
ライブを始めたのは開店から1年過ぎたころ。プロアマ問わず、いわゆる「ハコ代(会場代)」をもらわず無料で開放していたところ、口コミで伝わり、日本中を回るツアーミュージシャンなどから出演の申し出が次々とかかるようになった。
今回、新店の「こけら落とし公演」でもあるライブに駆け付けた竹原さんもその1人で、13年に初出演して以来の付き合いだ。ライブ活動にこだわり、弾き語りで例年200本もの公演をこなす竹原さんだが、今年は3、4月にまったく動けなかった。この日のライブは「店のエネルギーやたくましさを感じた。とても楽しかった」と話す。

地元愛も原動力

米窪さん自身、今年は幾つもの困難を乗り越えてきた。「緊急事態宣言」を受け4月の開業予定が6月に持ち越した。同業の飲食店やミュージシャンのつらい話を見聞きしたくないと、SNSやニュースから遠ざかった時期も。クラウドファンディングでの資金援助などできることをするうちに、自身も万全を尽くしてライブを開きたいとの思いが募っていったという。
塩尻で生まれ育ち、塩尻を愛する米窪さん。16年からは「しりフェス」と題し、100%自己出資で企画運営する音楽イベントを3回開催。県の「おもてなしマイスター」最高位「ゴールドマイスター」の称号も持ち、「塩尻からの発信」にこだわる。
今回のライブの動画配信の冒頭と最後にも塩尻市の紹介動画を入れた。「配信の段取りなど初めての試みで大変だったが、新しい生活様式に沿う形でできてホッとしている」と米窪さん。今後も塩尻を元気にしようと、新たなる発信に意欲を燃やしている。
ライブの動画は25日まで、1000円で視聴可能。サイトはtwitcasting.tv/bar_ontheroad。電話88・6776