松川村の子ども見守る「青パトさん」

安全な地域づくりに貢献

「気を付けて帰るんだよ」「はーい」
小雪が舞う松川村の通学路。青色回転灯を付けた車の窓が開いて中の男性が声を掛けると、下校途中の子どもたちはマスクの下の顔をほころばせ、元気に手を振った。村では下校時間帯に見られる、おなじみの光景だ。
村社会福祉協議会が所有する青色回転灯を装備した防犯パトロール車、通称「青パト」に交代で乗り込むのは、警察の講習を受けた60~90代の村内のボランティア男女18人。松川小、中学校の通学路付近を中心に、村内を定期的に巡回する。
ボランティアによる青パトの子ども見守り活動は15年目。雨の日も、風の日も、元気いっぱいの日も、ちょっぴり落ち込んだ日も、村内を見回る「青パトさん」たちの声と笑顔が地域の子どもたちを包んでいる。

通学する児童に優しいまなざし

松川村社会福祉協議会の呼び掛けで集まったボランティアは、2台の青パトで北と南に分かれて村内を巡回する。原則1台に2人態勢で、交通安全や不審者の姿がないか、危険箇所で遊んでいないか、目を配り、車を走らせ、声を掛けて子どもを見守る。
定期巡回のほか、熊が目撃された時、新型コロナウイルス感染防止のための休校期間など、要請を受けて臨時でパトロールに出る日もある。
巡回の時間に通学路を歩いてみた。多くの児童が青パトに気が付くと手を振り、通り過ぎても振り続ける子の姿も。松川小3年の男子児童は「見守ってもらえてうれしいし、安心する」と、青パトに笑顔を向けていた。
中学生になると、青パトからの声掛けに恥ずかしがる様子の生徒もいるが、「青パトさん」たちは、それも成長の過程と感じながら優しいまなざしを送る。
「ボランティアだったんですね、すごいですね」と、息の長い見守りに感謝するのは松川中3年の田中心優さん(14)。母の三重子さん(48)は「不審者の存在に気付きやすいなど、地域をよく知る年配の方が取り組んでくれる安心感、信頼感があります」と話す。
「住宅街の道に青パトで少し入っていったら、住民に『安心する』と感謝された」。そう話すのは石井敏秋さん(80)。活動が浸透し、子どもや保護者だけでなく、地域住民もその存在を頼りにしているようだ。

触れ合いながら地域見守り活動

青パトの巡回は「子どもを守るパトロールボランティア」の一環で2006年にスタートした。下校途中に子どもが巻き込まれる犯罪が多発、全国的に地域での見守り活動が活発化した時期だった。触れ合いながら見守る目を増やし、犯罪の抑止や、安全な地域づくりにつなげる目的があり、ウオーキングや犬の散歩を兼ねた日常的な見守り活動も展開している。
最高齢は、青パトの活動開始当初から参加している楜澤頭(はじめ)さん(90)。安全優先で青パトの運転は卒業したが、現在は助手席から月2回ほど、子どもたちを元気に見守っている。長年教員を務め、「家庭と学校の間で子どもの育ちを支える一翼を担えたら」と活動を続ける。手を振り返してくれる子どもの姿や笑顔に張り合いや喜びをもらい、「年相応に無理のない形で活動に加われることがうれしい。子どもとの関わりが、村の中の円満にもつながるのでは」と話す。

児童たちに向けメッセージ動画

「ひげのおじさんだよ。見掛けたら手を振ってくれるとうれしいです」。ビデオカメラの前で一人ずつ笑顔でメッセージを話す「青パトさん」たち。自分の名前を大きく書いた紙を掲げる人も。子どもに向けた動画メッセージの撮影風景だ。
例年は2月ごろ、村内にある2つの保育園を訪れ、入学を控えた年長児と遊んだり、食事をしたりして触れ合い、年度当初の下校時には小学校に足を運んで顔を覚えてもらっていた。今冬はコロナ禍で訪問や交流が難しく、子どもたちに動画を見てもらうことになった。
大北防犯協会連合会や大町署などから幾つも表彰を受け、地域に欠かせない活動になった青パトによる巡回。「見守りを始めた当初の子どもたちが、もう親になる」と、当初からのメンバーで村ボランティア協議会長も務める中牧美郎さん(73)。「青パトさん」の高齢化も進んでおり、課題の後継者確保に向け「若い世代への参加呼び掛けにも力を入れたい」と話した。