飛行機好き少年・奥原さんの飽くなき探究心

信州まつもと空港で写真展

松本と塩尻市にまたがる「信州まつもと空港」が見える自宅から、母親に抱っこされた赤ちゃんが、離陸する飛行機を見て「行っちゃった」と言った。この子が生まれて初めて発した言葉という。
「この子」とは松本市菅野中学3年の奥原海斗さん(15、今井)。生まれてからほぼ毎日、飛行機を見て育った奥原さんが「飛行機大好き少年」になったのは自然の流れだった。
その奥原さんが憧れのまなざしでシャッターを切った写真が1月5日まで、同空港ターミナルビル2階に展示されている。写真展の名は「松本空港の魅力と信州の自然」。
「今日撮った写真はもう二度と撮れない」という飽くなき探究心で技術を磨き、生み出した作品群。そこには「飛行機愛」があふれている。

写真展初日もカメラを抱え

奥原海斗さんの写真展が始まった19日、奥原さんも会場に詰め、鑑賞に訪れた小学校の恩師らに丁寧にあいさつをした。
同じく一緒に会場にいたプロカメラマンなどの写真仲間から、FDA(フジドリームエアラインズ)が運航する札幌線のジェット機が着陸体勢に入るという情報が…。早速、600ミリ望遠レンズを装着した一眼レフカメラを抱え、会場から送迎デッキにダッシュ。
光の向きや背景に何を入れるかなどを考慮して撮影ポジションを決めると、集中した表情でファインダーをのぞく。旋回して滑走路に進入してくる被写体にレンズを向け、一気に連続シャッターを切った。「今ので100枚ぐらい撮ったけど、この中で1枚でも当たりがあればいいな」。会場に戻った奥原さんは笑顔を見せた。
着陸する瞬間のFDAの機体、飛行するドクターヘリ、建設現場で鉄塔をつり上げているヘリコプターなど19点を展示。飛行機関連の作品以外にも、高ボッチ山で撮影した霧氷、木曽町開田高原で見た天の川、八ケ岳高原に現れたニホンジカの群れなど、信州を象徴するような風景写真もある。

プロに出会い「写真熱」に火

信州まつもと空港から1キロほどの場所で生まれ育った奥原さんは、常に飛行機が身近にあった。「幼い頃、眠っていてもヘリコプターの音がすると、ぱっと目を覚ました」と、母の郁子さん。物心が付かない頃から飛行機に興味を示した。
「どうせなら本物を見せたい」という郁子さんの考えもあり、小松飛行場(石川県)や中部国際空港(愛知県)などにも行き、飛行機を見学。成長するにつれて「どうしてあんな鉄の塊が飛べるの」という疑問も生まれ、飛行機の魅力にはまった。
写真との出会いは2018年11月。それまでも「記録用に」と、コンパクトカメラで撮影していた奥原さん。信州まつもと空港で開かれたイベントの会場にいた奥原さんに、プロカメラマンの辻元健朗さん(39、喬木村)が話し掛けた。
奥原さんの飛行機に関する知識や愛情を感じ取った辻元さん。「これで撮ってみたら」と、自身が使っていた一眼レフカメラとレンズを奥原さんに譲った。一気に「写真熱」に火が付いた奥原さん。辻元さんからカメラのシャッタースピードや露出、絞りなど基本的なことは教わっていたが、その機能をどう駆使するかは独自で勉強した。
辻元さんらが使っていた空港の管制塔とパイロットのやり取りを受信できる無線機も購入。給油だけのために一時着陸するなど珍しい飛行機の情報を入手すると、一目散で空港に駆け付けた。「家で情報を知ってから自転車で撮影ポイントまで到着する最短時間は6分30秒」と胸を張る。
その結果、「(技術的に)負けるとは思わないが、子どもの写真だとは思っていない」と辻元さんが舌を巻くほど腕前を上げた。
カメラを携えて、頻繁に空港周辺に現れる奥原さん。同じ場所を憩いの場としている大人たちにかわいがられる存在になり、今回の写真展も辻元さんら周囲の大人たちが奥原さんの背中を押した。
郁子さんは「この年では付き合えないような人たちと出会え、貴重な体験をしている」と目を細める。
「シャッターチャンスは一度だけで、スリリングなのが写真の魅力。これからもまだ見たことのない飛行機をたくさん撮りたい」。奥原さんは目を輝かせた。