チロルの森のアオイ 今どこに?ご開帳で大役も?

昨年11月末で閉園した信州塩尻農業公園チロルの森(塩尻市北小野)にいた雌のジャージー牛「アオイ(葵)」が、来年の善光寺(長野市)のご開帳で大役を担うかもしれない。閉園時に唯一残っていた牛で、乳牛としてはそろそろ引退の11歳。心配されていたアオイがなぜ?受け入れ先の千曲市屋代の千曲高原牧場を訪ねた。
会いに行ったのは12月半ば。経営者の村山義治さん(78)の計らいで、アオイは牧場の入り口、柵の外で待ってくれていた。頬や首をなでてやると、相変わらず気持ちよさそうにする。
「アオが来て1週間だが、俺にはだいぶ慣れてきたよ。意思疎通もできるようになってきた。本当にこの子は人懐っこくてかわいい」。村山さんは相好を崩す。
アオイは5頭の黒毛和牛と共に飼育される。今はまだ、餌を食べる時に他の牛から逃げ回っているというが、「うちの牛はみんなおとなしいから、だんだん溶け込んでいくよ」。
村山さんが受け入れを決めたのは、閉園のテレビニュースに映ったアオイの姿を見て。「高齢のジャージー牛は乳牛としても肉牛としても引き取り手はない。行き先はうちしかないと思い、すぐ園に電話した」。30年ほど前に半導体の製造会社を経営しながら牛を飼い始めたという村山さんの動物への愛情が、アオイの命をつないだ。

“呼べば来る牛”来園者の人気者

アオイはチロルの森生まれ。「呼べば来てくれる牛」と来園者に人気だった。飼育員としてアオイが生まれたときから面倒を見てきた中野美夏さん(50、塩尻市広丘野村)は「アオちゃんはおきゃん(おてんば)」と話し、「来場者にブラッシングされたり、小さな子どもが呼んでも遠くから駆けつけたり。こんなふうに触れ合える子になるとは想像もしていなかった」という。
アオイは4歳ころに一度お産を経験。このときに乳熱を発症して立てなくなり、殺処分の瀬戸際までいったこともある。中野さんは「閉園決定後、アオちゃんに会いに来る人も多く、チロルの最後を飾ってくれた。にぎわう園を見て、この日々のためにいてくれたような気がする」と感謝の言葉を重ねる。

村山さんが牛たちに用意する主な活躍の場はイベント。例えば、善光寺ご開帳の回向(えこう)柱奉納時に、回向柱を引く牛だ。1997年のご開帳から4回連続で村山さんの牛が大役を務める。
来年に延期されたご開帳の回向柱奉納行列に向けてアオイを調教していく考えで、「人懐こい上に穏やかで、間違いなくやれると思う」と太鼓判を押す。
盛装して堂々と歩くアオイの姿が見られる日を楽しみに待ちたい。