未来を救う昆虫食

近い将来、人口増による食料危機が予測され、特に不足が心配されるタンパク質の供給源として、植物由来の代替肉と並び昆虫食普及の必要性が指摘されている。
そんな近未来を先取りしたかのように、信州人は古くからイナゴ、蚕、蜂の子、ざざ虫などを食材として利用してきた。紛れもなく昆虫食の先進地だが、そんな信州人の中にも「虫はちょっと…」などと敬遠する「不届き者」も少なくない。
先見性のある「インセクトイーター(虫を食べる人たち)」の信州人として、2021年初頭に胸を張って高らかに宣言しよう。「昆虫食は未来を救う!」

栄養高く理想の食材―昆虫料理研究家・内山昭一さん

国連などの予測で、2050年には世界人口が90億人を超えると見込まれている。国連食糧農業機関(FAO)も、食料難対策として昆虫食を促す報告書を出している。
長野市出身の昆虫料理研究家で、NPO法人昆虫食普及ネットワーク理事長の内山昭一さん(70、東京都日野市)は、昆虫は「栄養面からも食材として理想的」と強調する。タンパク質はもちろん、オレイン酸など不飽和脂肪酸、カルシウム、ミネラルを含み、整腸作用もあるという。
特に優れているのは飼育効率の良さだ。何年もかけて育てる牛や豚などに比べて昆虫は早く育ち、繁殖率が高い。「同じ重さを育てるのに餌は牛の5分の1、水もかなり少なくて済む」と内山さん。
昆虫は丸ごと食べることができ、ごみもほとんど出ない。内山さんは「食べられる部分だけでみると牛は40%程度だが、昆虫はほぼ100%。羽や足などを取り除いても80%」と指摘。地球温暖化の原因ともされるメタンガスの発生もほとんどないとする。
昆虫を食料として大量に確保するには、養殖が必要だ。「イナゴは自然界では年1回の繁殖だが、養殖環境を整えて年2、3回繁殖できるようになれば効率が上がる。養蚕も食用としての産業化をもっと進めたらいい」。内山さんは、昆虫食は将来の需要が見込め、養殖はビジネスとして十分成り立つとみる。
一方で課題もある。養殖・加工に関する基準や法整備、餌を安定供給する仕組みなどはまだ確立されていない。昆虫食文化の発信に取り組む県職員有志らでつくる「信州昆虫食コンソーシアム」の保科千丈さん(56)は「逃げ出した場合は農業や生態系に大きな影響を与える。しっかりした枠組みを作る必要がある」と指摘する。
「昆虫は美味(うま)い!」などの著書がある内山さんに、おいしい昆虫のベスト3を聞いてみた。3位はセミの幼虫。2位はオオスズメバチの幼虫で「さっと湯がいてポン酢で食べるとフグの白子以上」。そして栄えある1位はカミキリムシの幼虫。味は「まるでマグロのトロのよう」と絶賛する。
さて本当かどうか、皆さんも試してみてはいかが。

【セミの幼虫のチリソース 】

◇材料(2人分)
セミの幼虫…6匹
タマネギ…1/4個
エビチリソースのもと…2人分1袋
片栗粉…適量

◇作り方
(1)幼虫を1分ほどゆで、ペーパータオルでしっかり水気を切る
(2)背に切れ目を入れ、胸と腹の殻をむく。頭の殻は残す
(3)片栗粉をボウルに入れて水で溶き、むき身の幼虫を入れてあえる
(4)フライパンを熱し、みじん切りしたタマネギを炒める
(5)むき身の幼虫をフライパンに入れ、チリソースを加えて炒める

◇ワンポイント
昆虫と似た感じのエビの料理が参考になる。殻があっても数時間おくとやわらかくなり食べやすい。むき身にすると味が染みてさらにおいしくなる。

高校生と「いなご煎餅 」 商品化―信州大経法学部2年・内田佑香さん

昆虫食を愛する頼もしい信州人の1人、信州大経法学部2年の内田佑香さん(20、松本市桐2)は、昆虫食の新商品開発に取り組んでいる。
松本県ケ丘高校に通っていた時、内閣府の「地方創生・政策アイデアコンテスト」で昆虫食をサプリメントとして活用するアイデアを発表。最優秀賞の地方創生担当大臣賞を受賞した。その後、松商学園高校ビジネス情報技術部(BIT部)と協力、「信州味噌(みそ)いなご煎餅(せんべい)」を開発、商品化した。
大学に進んでも昆虫食への関心は持ち続け、松商BIT部とのコラボで再び新しい商品を開発しようと、昨年11月に同校を訪問。まずは体験してもらうため、イナゴのつくだ煮を試食したり、どんな昆虫が食材に使えるかを話し合ったりした。
令和時代の高校生たちはイナゴを恐る恐る手に取り、しばらくにらめっこ。商業科2年の野澤真実さん(17)は「見た目は食べるのに勇気がいるが、食べてみるとエビのしっぽみたいで香ばしい」。内田さんは「商品化を通じて、昆虫食を身近に感じてもらえたらうれしい」と、信州の伝統食の継承と拡大に意欲を燃やしている。