【ガンズリポート】J1復帰へ 今季に懸ける

松本山雅FCの昨季は苦しい1年だった。新型コロナ禍により経営面で大きな打撃を受け、トップチームも苦戦を強いられた。勝負のシーズンとなる2021年の幕開けに、クラブのトップや下部組織の指導者、サポーターとボランティア組織の各リーダーに昨季を振り返りつつ、新年に「懸ける」思いを聞いた。

運営会社「松本山雅」社長
経験値を糧に─アウトプットを 神田文之さん(43)

昨年はコロナ禍を含めて苦しいシーズンとなり、私たちも考えさせられることが多い1年でした。だからこそ、この経験を糧にしないといけない。フロントの立場として、応援していただく皆さんの期待に応えるクラブをつくることが重要だと感じました。
経営面でも苦しかったからこそ、さらに体幹を鍛え、苦境を乗り越えた後に実力を発揮しようとスタッフ間で話し合っています。昨年の苦しい経験を踏まえ、今年どれだけアウトプットできるか。良い意味で他クラブに差をつけていけるよう、努力していきます。
山雅には、良い時も悪い時もポジティブに関わろうとしてくださるサポーターやスポンサーの皆さんが多い。コロナ禍が続く状況であっても、引き続き支援していただけるという話が多く、これが山雅の力だと改めて感じています。
今年も応援していただく皆さんと共に、クラブをつくっていければ、ありがたいですね。

ユースアカデミー「山雅Uー18」監督
北信越で勝負─育成に注目して 臼井弘貴さん(40)

シーズン中にトップチームの監督が交代した昨年、選手育成組織のアカデミーも指導体制が変わりました。激動の年でしたが、2人の選手をトップチームに昇格させることができました。
U-18(18歳以下)チームは昨年から北信越リーグで戦っています。星稜高や富山第一高など全国制覇の経験があるチームと真剣勝負ができ、その競争の中で選手が育つ。良いサイクルが生まれていると感じます。
しかし、これはゴールではなくスタート。試合も「勝つこと」より「勝ち続けること」の方が難しいように、ここから前進できるのか、後退してしまうのか。選手を育てる上で大事なのは「哲学」「環境」「仲間」「指導者」の4点。まだ全ての面でのレベルアップが必要だと痛感しています。
読者の皆さんにはぜひ、育成組織に目を向けていただきたい。注目されることで選手に責任感と義務感が生まれ、大きな成長につながります。

ホーム試合運営ボランティア「チームバモス」代表
感染対策して─おもてなしの場 丸山亨さん(43、安曇野市)

昨年は「非常に難しかった」というのが率直な感想です。新型コロナの感染拡大で、ボランティアに参加したくても職場や家庭に心配されたり、体調面を考慮したりし、参加を遠慮するメンバーがいました。活動する中でクラスターが起きないように、例年よりも少ない人数で運営しました。
そうした難しいシーズンでしたが、多くのファンやサポーターが観戦に来てくださったことは、私たちのやりがいや張り合いになりました。今年は、もっと多くの方に来てもらえるような環境になってほしい?と願っています。
チームバモスは、オフの期間中にウイルス感染対策を見直し、多くのメンバーが参加できる環境づくりを進めます。声を出さなくても「おもてなし」の気持ちが伝わるような取り組みも考えています。「また来たい」と思ってもらえるサンプロアルウィンをつくるのが、私たちの使命。今年もその点を突き詰めていきたいです。

サポーター組織「ウルトラスマツモト」コールリーダー
クラブに力を─皆の心を一つに 新関孝典さん(29、伊那市)

ホームの強みを生かし切れないホームゲームは、これほどまでにつらいものかと感じた昨年でした。鳴り物も横断幕も声援もないサンプロアルウィンは、どこか別の場所のよう。それでも「チームに少しでも力を与え続けたい」という一心で応援しました。
無観客試合や練習の見学休止などで、サポーターの熱が冷めてしまうことも心配されますが、山雅には多くの人がクラブと共に歩み、ここまで大きくしてきた歴史があります。「山雅らしさ」とは、ピッチの内外で関わる全ての人が創り上げるものだと考えています。
長いシーズンは、うまくいくことばかりではありません。だからこそ、今年は皆で課題を解決しながら、一昨年までのサンアルを少しずつ取り戻したい。皆が一つになった時のパワーは、どこにも負けません。さまざまな事情でスタジアムに足を運ぶことができていない人も、山雅との「心の距離」だけは離さずにいてもらえれば、うれしいですね。

(フリーライター多岐太宿)