大きな目標へ歩む黒板アーティスト

かぶり物がトレードマーク 錦鯉野アキコさん 安曇野市

ニシキゴイのかぶり物をして黒板を見上げるのは、その名も錦鯉野(にしきごいの)アキコさん(本名・佐々木亜希子、45、安曇野市堀金三田)。職業は「黒板アーティスト」だ。
2016年、たまたま100円ショップで目にした黒板とチョークに興味を持ち、購入した。早速文字や線を書いてみたが、思ったように書けなかった。「悔しい!」。その思いがきっかけとなり、黒板アートの世界にのめり込んだ。
徐々に腕を上げ、写真共有アプリ「インスタグラム」に投稿を続けたところ、見た人から制作の依頼が寄せられるようになった。黒板アーティスト一本でやっていきたい─。勤めていた会社を辞め、大好きだったお酒も断ち、大きな目標に向けて歩みだした。

魚が大好き描き続ける

5年前に黒板アートと出合った錦鯉野アキコさん。1カ月間、寝る間を惜しんで練習に励んだ。もともと絵は好きだが、絵を描いたのは高校時代の美術の授業が最後。太いチョークと黒板を相手に試行錯誤を繰り返した。
「さかなクンと共演したい」と語るほど、魚が大好き。黒板アートに挑むなら好きなものを題材にしたいと、主に魚を描き続けた。自身の成長を記録に残そうと思い、1枚目からインスタグラムに投稿。そのうちにふと思った。「これだけのめり込めるものは、これまでになかった。本気でやったら何かにつながるのではないか」。41歳の時だった。
その後は水産関係の仕事をしながら、イベントに出たり個展やグループ展を開いたり。依頼を受けて、飲食店やイベント会場などに飾る黒板アートを有料で請け負うなどして収入を得ている。
依頼の内容は、魚から、毛針、ペット、店内の装飾|など、幅広い。依頼を受けた作品はオイルパステルで描くことが多いが、それ以外の作品は主にチョークで描き、写真を撮るなどした後は、あまり時を置かずに消す。「魚も黒板アートも鮮度が命」だからだ。

かぶり物は、まだ黒板アートの腕に自信がないころ、「上手な絵を描けなくても目立ちたい!」と、ゴム製のパンダのマスクを展示会場でかぶったのがきっかけだった。
ニシキゴイのかぶり物は一昨年、知人からもらった。「最初は恥ずかしかった。なんで私こんなことやっているんだろうって」。今ではかぶり物がトレードマークとなり、ないと逆に落ち着かなくなった。いろいろな人に声を掛けられ自身を覚えてもらえ、黒板アートや作品を知ってもらえる|。いいことずくめだった。
全日本錦鯉振興会の関係者ともつながりができた。ニシキゴイ養殖産業の本場、新潟県小千谷市からも声が掛かり、コラボグッズの計画も進む。

古い瓶掘り幻のお宝も

趣味から職業になった黒板アート以外に錦鯉野さんがのめり込んでいるのが、河川敷などの地中から古い瓶を掘り出すボトルディギング(BottleDigging)だ。掘り出し物の多くは明治~昭和30年代のレトロな瓶。「今どきのボトルと違い、昔の物はまさにガラス細工。コバルトブルーの薬瓶など今は作られていない幻のお宝もある」と錦鯉野さん。
「ごみ拾いの一環」としながらも、厚く、いびつで、ゆがみがあり、気泡が入った「味のある」瓶に出合うと心がときめく。掘り出してきれいに洗浄し、眺めたり、欲しい人に譲ったり。これまでに割れていない物だけでも1000点以上を掘り出した。
今の自分の生き方が好きだ。将来への不安はあるが、「好きなことを仕事にできるだけで満足」と話す。今月21、22日には、松本市の中町にある蔵シック館で開くあんじぇるさん(同市)、アトリエ委tomoの古畑委子さん(安曇野市)との3人展を予定しており、その作品づくりに忙しい。
多くの作品にも登場する大好きな魚だが、「実は、食べられないんですよ。特に、光り物の魚はアレルギーがあって」。お茶目な笑顔を見せた。