「体験」提供ジュニア育成にも力
「3年後のパリ五輪でもスポーツクライミングが正式種目になったことで、競技の認知度がさらに上がるのでは」。こう話すのは中南信地区でクライミング施設を3店舗運営するトリップサービス(松本市島内)の加藤隆章社長だ。レジャーとしてのクライミング人気が高まる中、「今年は競技者育成にも力を入れたい」と先を見据えている。
昨年10月に伊那市にオープンした「エッジアンドソファークライムワンダーランド伊那」は、高さ10メートル以上の人工壁があり、県内で唯一、スポーツクライミング競技の中の「リードクライミング」が可能な施設だ。
同競技には、安全のためのロープを装着して15メートル以上の壁を登るリードのほかに、3~5メートルの壁をロープなどを付けずに登る「ボルダリング」、登る速さを競う「スピードクライミング」がある。
日本で最もポピュラーなボルダリングは女性や子どもにも人気がある一方、リードはロープワークなど高い技術と知識、体力が必要で、より本格派の愛好者に好まれる種目だ。
同社が運営する「エッジアンドソファーボルダリングパーク」の松本店(島内)と諏訪店はボルダリング専用のため「中南信地区でこの2種目ができるというのは、なかなかいい環境が整った」と胸を張る。
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国士舘大在学中からファッションに興味があり、学校を1年で中退してアルバイト先のアパレル企業に就職。出身地の松本に戻ってからもアパレル業界で働き、30歳の頃、自身のセレクトショップ「RONE」を中心市街地にオープンした。
店は順調だったが、徐々に「ただ『物を売る』だけでなく、お客さんに『体験』を提供したくなった」と2010年、アパレル業から事業転換し、趣味としてはまっていたボルダリングの施設、エッジアンドソファー松本店をオープン。南信地区の需要を狙って16年に諏訪店をオープンした。
「できないことを、できるようにする大人の遊びです」とクライミングの魅力を語る。
現在、施設の会員登録者数は7000人を超え、15年から始めたジュニア(小中学生)スクールには約50人が通う。
さらなる多店舗展開も視野に入れるが、先が見えないコロナ禍。今はしっかりと腰を据えて3店に集中する時と決め、今年力を入れるのは「ジュニア育成」だ。「店の看板を背負って五輪に出場する選手が出てくれたらうれしいですね」と大きな夢を描く。
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【プロフィル】
かとう・たかあき1971年、旧安曇村(現松本市安曇)出身。松本筑摩高卒、国士舘大中退。都内のアパレル企業で働いた後、松本に戻る。2000年、トリップサービスを設立し社長就任。49歳。松本市中央3。