臨床美術士・小畠喜代子さんに聞く―脳を活性化「臨床美術」

臨床美術(クリニカルアート)を知ってますか?上手下手に関係なく絵やオブジェなどの作品を、楽しみながら作ることで脳を活性化させる芸術療法の1つ。認知症の改善を目的として始まったが、今では高齢者の生きがいづくり、ストレス軽減、心の解放や意欲向上などの効果が期待されている。臨床美術士の小畠喜代子さん(56、諏訪市)が松本市のMウイング(中央1)で昨年12月に開いた講座に参加し、やり方や効果などを聞いた。

音楽を楽しく「描く」

小畠さんが開いた講座名は「脳を活性化させる大人のアートセミナー」。この日は、20~80代の6人が参加。バッハのパイプオルガンの曲が流れる中、参加者は音楽を聞きながら、感じた「音」を「色」に変換。
透明なグラスに筆やスポンジなどを使って絵の具で描いたり、鋭角に削った割り箸で削ったりして、キャンドルホルダーを作った。描くのはハートや星などの既存の図形ではなく、自分の感覚から湧き出る点、線、面だ。完成した作品にろうそくを立て、火を付けて、全員で鑑賞会を行い、感想を述べ合った。
参加者からは「音を描く感覚は、普段は絶対に体験できない」「難しいと思ったが描いているうちに楽しくなり、すてきな作品ができた」などの感想が出た。
音を「描く」というと最初はどう描けばいいか戸惑うが、小畠さんのアドバイスを聞きながらだと、ガイドされるように安心して自分のペースで描くことができる。

ストレス発散にも

臨床美術士の主な役割は▽アート制作という非日常的な体験をしてもらうことで楽しさを提案し、新しい発見をしてもらう▽制作に悩んでいる人の気持ちに寄り添いながらサポートする▽鑑賞会で作品の魅力を具体的に伝えながらアートの見方を提案する|。
アートに苦手意識がある人にとっては、芸術表現は簡単なことではないが、それを楽しんでもらうためのアートプログラムがあり、そのプログラムを分かりやすく解説しながら参加者をサポートするのも臨床美術士の役目だ。
リンゴを描く場合は、見るだけでなく手で触る、重さを感じる、匂いをかぐ、試食して味わうなど、五感を使ってリンゴそのものを丸ごと感じ、リンゴの美しさや面白さを発見してから始めるのがこつ。石やグラス、植木鉢などに、スポンジや筆を使って描いたり、粘土やワイヤを使って立体物を作ったりするなど表現方法はさまざまだ。
制作することによって、何げない日常が新鮮に、生き生きと見えてくるほか、同じ時間を共有した参加者同士で作品を通して会話が弾み、右脳で感じたことを左脳で言葉に変換して伝えるため脳の活性化にもつながるという。
勉強に追われる子どもや働く人たちのストレス発散にも有効。障害者も道具を工夫するなどして取り組むことができる。認知症の人は継続して続けることに意味があり、軽度の認知症なら、症状の改善や進行を遅らせる効果などもあるという。
小畠さんは「アートは決して特別なことでも難しいことでもありません。一緒に楽しさを体験してみませんか」と呼び掛ける。

毎月第3木曜日に社会保険労務士法人・しなのSC(松本市空港東)で小畠さんの講座「心が晴れるアート塾」が開かれている。参加費3回で5000円。しなの経営労務支援センター℡0263・86・4711