パリに渡った料理人の竹田さん 休業中もレシピ発信

自宅での時間を最大限活用

フランス料理の本場パリで料理長として腕を振るい始めた矢先、コロナ禍で店が休業を強いられた。現在は、SNSなどで家庭向けの簡単レシピや街の様子などを発信、店の再開に備える。
白馬村出身の料理人、竹田(ちくだ)和真さん(34)。昨年9月、パリ5区に開店したレストラン「narro(ナロ)」が彼の職場だ。リーズナブルな価格ながら満足度の高い料理が好評で、店の認知度も上昇しつつあった。
昨年10月末から、フランス政府の営業制限により休業は続くが、情報発信や視聴者の反応から学ぶことは多い。簡単でおいしい料理の研究、伝わりやすい表現の工夫などは、店のオペレーションやスタッフの教育にも生かせる。店を訪れる人に自慢の料理を出せる日の再来を願いつつ、自己を磨き高める日々を送る。

家庭で作れるフランス料理

オニオングラタンスープ、フレンチトースト、濃厚でとろけるプリン…。見るだけで食欲が刺激され、心が満たされる。竹田和真さんが動画投稿サイト「YouTube」に公開した、本格的だが家庭でも作れるフランス料理のレシピ動画。手順やポイント、日本の食材を使った品、手際などを日本語のテロップ付きで投稿している。
昨年11月に公開した伝統菓子「タルトタタン」の再生回数は3000回を超えた。実際に作った視聴者から反響もある。写真共有アプリ「インスタグラム」にはレシピのほか、百貨店の巨大クリスマスツリー、マルシェ(街の市場)といった現地の日常や美しい光景も載せている。
情報発信は昨夏から始めた。コロナ禍でパリに来られない人、家で過ごす時間が増えた人など、主には在仏を含めた日本人がターゲットだ。各地で開くマルシェの特色や季節感あふれる品ぞろえといった食を大切にするフランス人の国民性も交え、料理人と住民の目線から総合的にフランスの文化や情報を伝える工夫をする。
「フランス料理は遠い存在かもしれないが、簡単にも作れる身近な存在だと知ってもらいたい。いろんな料理に応用できるこつも発信していけたら」と竹田さん。これからもオリジナルレシピを惜しみなく公開する。

コロナ禍でも本場で奮闘中

竹田さんは池田工業高校(池田町)を卒業後、長野調理製菓専門学校(長野市)を経て、都内を中心に全国でフランス、イタリア料理店を展開する会社に入社。調理の現場で経験を積んだ。「本場を見て、現地の食材を使った料理を提供したかった」と、2015年に渡仏。パリのレストランで約5年働き、フランス料理とナチュラルワインの店「narro」(最大70席)の料理長に就いた。
パリで仕事をして、「自分には思い付かないような料理を作る人がたくさんいる」と刺激を受けた。食材の違いにも新たな発見があり、調理技術や感性を養ってきた。
パリには若手を含め日本人シェフの存在は珍しくはない。竹田さんは「日本人は繊細な料理を作り、丁寧な仕事をすることが現地の人に知られるようになってきた」。日本から来た料理人たちが苦労して築き上げてきた環境に感謝し、「挑戦する面白さや現地の人が認めてくれた時のうれしさがある」と、本場での仕事の醍醐味(だいごみ)を語る。
「営業再開のめどが立たないのは、自分の意志ではどうにもならない」。感染拡大が収まらず、もどかしさは募るばかりだが、「増えた自宅での時間を、これからのために最大限活用したい」と、あくまでプラス思考。足を運び喜んでもらえる店づくりにも生かせる取り組みに、在宅時間を有効に使う毎日だ。
再開後の来店につなげる活発な情報発信はもちろん、YouTubeで広告収入獲得も狙う。低価格だが特別な食材を使うといった、来店客や店に還元する構想を温め、出張料理の需要も探る。
コロナ禍のパリで奮闘する白馬育ちのフランス料理人、竹田さん。休業中も動きを止めずに、しっかりと前を向いている。

竹田さんの投稿は、YouTubeが「parischiku」、インスタグラムは「chikuda_kazuma」で検索。