木と鉄に向き合い 作る喜び

「moku─tetsu工房 風ノ森」小林勝美さん

草刈り機の刃で作った時計、鉄の枠のランプ、仕掛けが面白い宝箱─。安曇野市穂高有明のアトリエに、木や鉄でできた作品がずらりと並ぶ。
作ったのは「moku─tetsu工房 風ノ森」の小林勝美さん(71)。手作りが得意な父の背中を見て、木を使って物を作る楽しさを知った。自宅隣にある2階建ての工房兼アトリエも、5年かけて手作りした。
5、6年前からは、実家のある神奈川県の特別支援学校に木で組み立てるおもちゃを贈っている。今年は干支(えと)の牛を30組作ってプレゼントしようと準備を進める。
「物を作るのは楽しいね」と小林さん。だが、アトリエを訪れる人はコロナ禍以前の1割に減った。今は作品を見てくれる人が再び増える日々が来るのを願い、木と鉄に向き合う。

仕掛け宝箱など多彩な作品並ぶ

「moku─tetsu工房 風ノ森」2階のアトリエはまるでおもちゃ箱のよう。さまざまな作品が並び、わくわくする。
作品の一つ、木の宝箱は海賊映画に出てくるような形。ふたを開けると小引き出しがあり、それを引き出すと下の引き出しを開けるための鍵が出てくる。ふたの内側部分に棒を入れて閉めると、ふたの上の部分が開く仕掛けだ。
宝箱は、7、8年前に名古屋市に住む女子中学生から依頼を受けて作ったのが第1号。仕掛けの部分は、この依頼者のアイデアをもとに完成させた。子どもや孫にプレゼントする人が多く、これまでに20個以上を作った。
前輪が大きなだるま自転車をデザインした時計は、木と鉄を組み合わせた作品。ハンドルの先にパチンコ玉を溶接し、文字盤には木の実を使った。登山者がかたどられた木枠の写真立ては、山の写真をさらに引き立てる。
小林勝美さんは、木できねを作ったり竹で魚を取る籠を作ったりしていた父の影響を受け、小学生のころから道具を借りて見よう見まねで木の作品を作り続けてきた。神奈川県内の高校を卒業後、地元のタイヤ製造会社に就職。そこで機械の保守を担当し、溶接といった鉄工の技術も習得した。
40年以上前、雪が積もった安曇野を訪れ、「墨絵のような景色」に感動したのがきっかけで移住した。家の中にある食器棚や書棚、テーブルなどの家具はすべて自身の手作り。妻の由利子さん(72)は「家具は作ってもらうものだと思っていた」と笑う。知人に頼まれ、農機具用の小屋を建てるなど、会社勤めの傍ら、さまざまなことに取り組んだ。

木のおもちゃを毎年プレゼント

定年後、妻の勧めで工房兼アトリエを開いた。当初は木か鉄かどちらかで─と思っていたが、知人に「両方やった方がいい」と言われ挑戦。「木は言うことを聞いてくれるが、鉄は思ったようにならないこともある。その違いが面白い」と小林さん。
7年前から、義妹が教師を務める神奈川県の特別支援学校に木のおもちゃを無償で贈っている。プレゼントは3年前から、その年の干支にちなんだものにしている。完成品ではなく、足を接着剤で胴体にくっつける工程を残すなど、作る楽しみも添えている。「毎年、楽しみにしている。お礼の手紙が届くのがうれしい」と小林さん。
材料は購入することもあるが、建築業で使わなくなった木材を手に入れたり、ごみ出しの日に集まった瓶の中から使えそうなものを見つけたり。捨てられるものに付加価値を付け、作品として再生させることにも達成感を覚える。
コロナ禍で、アトリエを訪れる人はぐっと少なくなり、「作る喜び」を支える「見てもらい感じてもらえる喜び」を渇望する。これからの夢は─の質問に「ただただコロナの収束を願うばかり」と答えた。

工房は午前10時~午後5時。不定休。小林さん℡090・4821・0204