アイスホッケーの魅力 松本から発信

国体県代表 山本健太郎さん
故郷・北海道を倒したい

「氷上の格闘技」と言われるアイスホッケー。「美」を追求するエステティックサロンの会社に勤めながら、信州を、この激しく荒々しいスポーツの強豪県にしたい─と夢を描く若者がいる。
北海道釧路市出身の山本健太郎さん(24、松本市野溝木工)。学生時代、強豪ひしめく関東大学リーグで、得点とアシストを合わせたポイント王に輝いた実力者だ。愛知県を会場に今冬開いた国体冬季大会アイスホッケー競技会にも、長野県成年チームの副主将として出場した。
大学を卒業し、社会人生活の地となった信州。「故郷の北海道を倒したい」と目標を口にする山本さんが、スケートリンクもなくアイスホッケーが決して盛んとはいえない松本で、夢に向かって歩みだした。

強豪校でプレー 縁あって信州へ

先の国体アイスホッケー成年で、長野は2回戦(1月28日)で強豪・青森県に2─14と大敗した。FWの山本健太郎さんは初戦でハットトリックを達成する活躍を見せたが、青森戦で付けられた12点差は競技人生で最大の屈辱だった。「若返ったチーム。劣勢になった時、その流れを止められなかった」と副主将としての責任を痛感しつつ、「今後のいい勉強」と前を向いた。

北海道でも苫小牧市と並んでアイスホッケーが盛んな釧路市で5歳から競技を始め、高校は地元の武修館高校に進んだ。2年時に全国高校総体3位、3年時には同8強と好成績を収め、誘いがあった日体大に進学。4年時に4位になった日本学生氷上競技選手権でポイント王に輝いた。
卒業後も競技続行を望んでいた山本さん。就職先を決める際、真っ先に選択肢から除いたのが北海道に戻ることだった。「北海道でアイスホッケーの選手はその強さゆえに肩で風切って歩いている。そんな北海道を倒したい」と笑う。
新興のプロクラブチームから誘いもあったが、「人を幸せにする仕事がしたい」という漠然とした思いから、結婚式場の運営会社に就職、松本市内の式場に配属された。山本さんは早速、軽井沢町が拠点の社会人チームに入部。信州大アイスホッケー部の練習にも加わり、競技を続けた。

心強い理解者とプロクラブの夢

転機は社会人2年目の昨年7月。岡谷市の少年チーム、やまびこバスターズのホームリンクに知り合いの選手を招いた。寺尾勇利さん(25)。山本さんとは中学生のころから親交がある栃木日光アイスバックスの選手で、アイスホッケーの本場北米に渡って武者修行し、世界最高峰のプロリーグNHL入りも期待されている逸材だ。
アイスホッケー小僧たちの憧れの1人でもある寺尾さんの突然の登場に、子どもたちは興奮。保護者の1人、南山良さん(45)も寺尾さんの大ファンで、その場で寺尾さんからトレーナーを贈られた。そのお礼に|と後日、南山さんは寺尾さん、山本さんらを食事に誘い、交流を深めた。
アイスホッケー談議の中で、山本さんは1998年長野冬季五輪男子アイスホッケー会場となったビッグハット(長野市)がある信州を強くし、魅力を発信したい|と力説。南山さんは、部活など県内に高校生以上の競技者の受け皿がほとんどない実情を訴えた。
山本さんは南山さんの人間力に感動し、南山さんは彼の熱い思いを受け止めた。昨年11月、山本さんは結婚式場を退職し、松本市内でエステティックサロンなどを経営する南山さんの会社「Happiness(ハピネス)」に就職してフィットネス事業を担当。競技者としても、同社からバックアップを受けることになった。
心強い理解者を得た山本さん。今後、中信地区の中学や高校にアイスホッケー部設立を働き掛けるほか、南山さんと協力して選手の採用に前向きな企業を募り、2028年の長野冬季国体での県勢優勝に向け、プロのクラブチーム設立を目指す。
「これからはいろんな現実にぶつかる。それを乗り越える人間力を磨いてほしい」と南山さん。その思いを受け、山本さんは「信州からアイスホッケーの魅力を発信したい。これから5年間が勝負」と闘志を燃やしている。