出会い直す「居場所づくり」

講演会聞きどころ
NPO法人「場づくりネット」副理事長 元島生さん

障害者らの自立支援に取り組む筑北村のNPO法人「わっこ谷の山福農林舎」は、引きこもりの人の居場所づくりをテーマにした講演会を開いた。生活困窮者などから相談を受けているNPO法人「場づくりネット」(上田市)の元島生(しょう)副理事長(37)が、支援の経験を話し、約20人が聞いた。(1月23日)

仲間と設置と運営を手掛けた富山県高岡市の「コミュニティハウスひとのま」は、学校に行っていない子どもの居場所として一軒家を借り、生活保護を受けているおっちゃんや地域のおばちゃんにも開放している。多様な人の集まりの中には「不登校の子」として見られない「隙間」のようなものがあって、そこに居場所ができる感覚がある。行事への参加も大事。地域の人にかわいがってもらう環境でこそ元気になる。
出会うのは「レッテル」でなく「人」。その子の経歴より、その場で起こることを優先する方が断然面白い。「巨大オムライスを作って食べる」など、それぞれがやってみたいことを次々に実行した。
そんな中、力ずくで登校させられていた1人の小学生が緊張しながらも来るようになった。笑わせることを当面の目標にしていたある日、遅刻した僕が「ひとのまは先生が遅刻する学校だな」と言うと「うん。いい感じ」と返してくれた。その子の声を聞いたのはそれが初めて。「これでいいんだ」とさらに緩い場所になっていった。
ルールを作らず24時間開放しているので、不用品が集まったり小銭がなくなったりとトラブルも起きるが、これがいい「種」。大変な思いをしている子に気付いたり、皆で対等に話し合ったりする機会になっている。
今、関わっている上田市の「のきした」は、コロナ禍を機に人がつながる場所を目指して誕生した。昨年末、4日間の食糧支援をして大きな気づきと深い反省があった。それは施す側と施される側の境界線と、欲望を引き出す場所を作ってしまったこと。食品を大量に持ち帰っては繰り返し並ぶ人や、米や野菜が余っているのにジャンクフードに群がる人を目の当たりにして大きな衝撃を受けた。
後半はその反省を生かして食糧品の渡し方を工夫した。最終日の炊き出しでは、初日に鬼の形相だったおっちゃんも柔和な顔で「寿命が30年延びた」と言った。火を囲んで一緒に豚汁を食べ、いろんな話をして出会い直すことができた。帰り道で手を振ったら「ごくろうさん」と敬礼してくれ、そのとき初めて上田の街が自分の居場所になったような気がした。「居場所づくり」とは出会い直すことなんだと思う。