松本の井戸水で地ビールづくり

深志商事が松本ブルワリーに委託

松本市街地の恵まれた湧き水でおいしい地ビールを造ろう─と、「松本井戸水ビールプロジェクト」と銘打ったプロジェクトが動きだした。
企画したのは、フードデリバリーサービスなどを展開する深志商事(同市大手4)。市が管理する18の井戸のうち、水量や水質面で問題のない井戸の水を使い、醸造は松本ブルワリー(同市中央3)に委託する。
場所によって、味が異なるという井戸水。その違いをビールでも味わってもらい、松本の「水の都」としての側面を地ビールでもPRしたい─。そんな願いを込める。
醸造できる量が限られるため、地域の飲食店でしか飲めないといった付加価値も高めたい考え。初のビールは今春には完成予定だ。

伏流水に恵まれ世界でも珍しく

「松本井戸水ビールプロジェクト」は3、4カ月前、深志商事の役員会の雑談の中で生まれた。良い水と米が欠かせないとされる日本酒と同様、ビールももっと水にこだわることで地域の特色を出せるのでは|との声だった。
同社の住吉久典代表(31)は、水を通して松本の文化を広めたいという思いを以前から持っていた。「四方を山に囲まれ、そこからの伏流水に恵まれた松本は、世界的に見ても珍しいエリア」と住吉さん。あちらこちらに井戸があり水をアピールできる街なのに、それを生かしたプロジェクトの少なさが気になっていたという。
松本市街地で市が管理する井戸は18。調べてみると水質がビールに適さなかったり、水量が少なかったりで、そのすべてでビールを造ろうという目標は難しいことが分かった。併せて、コロナ禍に伴い飲食店での需要も当面はあまり見込めないことから、今回は2カ所の井戸水で仕込むことにした。

2つの井戸水でラガーを醸造中

市の許可を得て、1月28日に松本神社前、29日には北馬場柳の井戸の水を、それぞれ160リットルくみ、すぐに松本ブルワリーの醸造所(野溝西2)に運び込んだ。翌日から全く同じレシピで醸造を開始。低温で長時間かけて下面発酵させるラガービールにする予定で、1~2カ月かけてじっくり熟成させる。
「のどごしが良くキレのあるラガーは、日本人が飲み慣れたビール。井戸水の特徴が出ればいい」。同ブルワリー醸造責任者の勝山拓海さん(29)は、そう意気込む。「松本神社の水には『神頼み』でコロナ収束の願いを込めた。北馬場柳の水は松本神社に比べて硬度があり、味に特徴がある」と住吉さん。
4月上旬には、今回くんだ水からそれぞれ約40リットルのビールができる。「松本ブルワリータップルーム中町店」(中央3)、「SAKEPUB」(大手4)、「風林火山」(中央1)など4~5店で、どちらか1種を生ビールで提供する予定だ。
「コロナウイルスの感染状況を見ながらだが、5、6月には大量供給できる態勢を整えたい」と住吉さん。第1弾が好評なら他の井戸水のビールも仕込むつもりだ。
ビールに使った水の井戸を巡ることで市街地の回遊促進につなげる構想も。住吉さんは「それぞれの井戸にビールサーバーを置いて提供するイベントも面白いのではないか」と夢を描く。売り上げの一部は市に寄付し、公共的な井戸の維持管理費に充ててもらう予定だ。
地元の人に、お茶やコーヒーなどに利用されている松本市街地の井戸水。さて、ビールはどんな味がするんだろう。早く飲んでみたいなあ。