再使用紙ステーショナリーを製作 田中正也さん

阪神大震災をきっかけに

美しく製本されたメモパッドの色鮮やかな表紙をめくるとカレンダーの裏紙。はがし心地がなめらかな白いメモ用紙もチラシの裏紙でできている。これらは松本市桐3の田中正也さん(76)の「再使用紙ステーショナリー(文房具)」。1995年の阪神淡路大震災がきっかけで作り始めた。
地震で大きく揺れた兵庫県明石市の自宅マンション。物が散乱する部屋で、田中さんは紙ごみの山を前にして思い付いた。デザイナーだった田中さん。この大量の紙を再利用できないか―。
同県が復興プロジェクトの一つとして、クラフトを盛り上げようとしていた動きにも背中を押された。バブル崩壊のあおりを受け震災直前に失職していた田中さんは手作りのメモパッドやノートなどを携え、県主催で関西各地で開かれるクラフトフェアに出店。自分の居場所ができたと元気づけられたという。
若い頃から信州が好きで、毎月のように家族で遊びに来ていた田中さん。10年前、縁あって息子家族が暮らす松本へ夫婦で移住した。
自身の工房の名前は、スペイン語で「自由、解放」を意味する「ラ・リベルタ」。かつて仕事で赴任した中米・エルサルバドルの港町から取った。サラリーマン生活の後に新しいことに挑む自分と、再生を図る被災地を重ね合わせた。
日頃からチラシや包装紙、菓子箱、厚紙などを捨てずに材料としてためている。白無地の裏紙が100枚集まると製本用接着剤をはけで塗って背をとじ、裁断機でメモ帳の大きさに切りそろえる。
「捨てられる紙を生活用品に作り直し、もう一度使うことで『ご苦労さまでした』と言ってやりたい」。田中さんが失職や被災の体験から得た「再生」の精神が、自身が作る文房具に宿っている。
市内のジャム店「シェ・モモ」(大手4)、書店「本・中川」(元町1)、「ラ・リベルタ」のホームページ(https://kiri5958.wixsite.com/lalibertad-2)から購入できる。