松本出身シンガーソングライターNEMNE 再出発

撮影=RyutaroIzaki

ウエーブがかかったピンクの髪で顔のほとんどを覆い隠し、目を閉じて空を仰ぐ女性。アルバイトをしながら音楽活動をし、歌の世界で大きく羽ばたく夢へと進み続ける。
女性は松本市松原出身、川崎市在住のシンガー・ソングライターNEMNE(ネムネ)さん(33)。英語の「New」と「Me」を組み合わせた造語で、「新しい私」の意だ。
今年から、音楽活動の名前をNEMNEに変更。第1弾となる配信シングル「Mind(マインド)」をこのほどリリースした。
「もっと素直に自分の心情を言葉にしたかった」。デビュー9年目の新曲では「拙劣なまま何が悪い?」と歌う。どこかの「あなた」を励ますつもりの言葉だが、知らずにデビュー当時の自分を意識した原点回帰の言葉にもなっていた。

「早く松本でライブがしたい」

「自分の本心を」UKOから改名

改名前まで「UKO(ユーコ)」の名で活動していたNEMNEさん。2013年にミニアルバム「Alive(アライブ)」でデビュー。以降、都内や出身地、松本市内のライブハウスなどで積極的に活動している。
ボーカルとピアノでバラードを聴かせるスタイルを軸にしてきたが、14年にディスコやファンクなどの要素をミックスしたファーストシングル「Signal(シグナル)」を発売。さまざまなミュージシャンへ作品提供もするようになり、16年に出したファーストアルバム「Saturdayboogieholiday(サタデイ・ブギー・ホリデイ)」は、「シティー・ポップの新星」などと好評を得た。
転機になったのは30歳になった18年。音楽フェスティバルやテレビ番組に出演し始めた男性3人組ロックバンド「LUCKYTAPES(ラッキー・テープス)」のコーラスに加わったのがきっかけだ。「大舞台に立たせてもらい、とてもありがたかったし刺激にもなった」。一方で、デビューが自身より遅い同バンドの活躍ぶりに「悔しかった」とも話す。
30歳を過ぎ、それまでの「キラキラした言葉」を意識した作詞から「自分の本心をそのまま出したい」と心境も変化。「UKO」から「NEMNE」に生まれ変わった。

「原点」に戻った第1弾シングル

NEMNEとしての第1弾シングル「Mind」は、現在人気上昇中の音楽プロデューサー、ShinSakiura(シン・サキウラ)さんがアレンジを担当。「再出発の時はどうしても一緒に仕事がしたかった」という。
ダンスミュージックとR&Bを掛け合わせたような乗りのいい曲調。歌詞には「拙劣なまま何が悪い?」「楽になれるでしょう」「もっとワガママに魅せるの」「そのままで愛(いと)おしい」など、誰かを励ます言葉がちりばめられている。
NEMNEさんは13年のデビュー当時に出した楽曲に「自分は周りに支えてくれる人がいるからこそ、生きていける。1人では何もできない」との気持ちを込めた。今回の「Mind」に見られる本心から出た励ましの言葉は、8年前のUKOさんに向かって「そのままでいい」と、自身に言い聞かせているようにも聞こえた。「全く気にしていなかったがそうかもしれない。原点回帰ですね」

心機一転の再スタートだが、音楽一本ではまだやっていけないため、コロナ禍でライブができない現状は厳しい。これまでも夢を諦めた何人もの音楽仲間を見てきた。それでも「私には音楽以外のことをやるという選択肢は全くない。1人のボーカリストとして売れるのは難しいかもしれないけど歌い続ける。早く松本でライブがしたいですね」。NEMNEさんはきっぱり言って前を向いた。

プロフィル
【NEMNE】本名・笠原由布子。松本市明善小4年時にSK松本ジュニア合唱団に入団。田川高校(塩尻市)時代は軽音楽部に所属し、ボーカルのほかドラムも担当した。洗足学園音楽大学(川崎市)の音楽・音響デザインコースに進学し、ミュージシャンとしての活動を始めた。