保育士の平川さん 独自の保育園設立へ

「キッズハウスとらうむ」安曇野市

保育士や親の経験を生かした理想の保育を形にして、みんなの夢も実現させたい-。そんな思いが込められた「夢」という名の保育園が4月、有明山を間近に仰ぎ見る安曇野市穂高有明に開所する。
3歳未満児対象の小規模保育園「キッズハウスとらうむ」。トラウムはドイツ語で「夢」を意味する。園長は、町村合併前の穂高町で町立保育園の男性保育士第1号となった平川昭さん(42)だ。
松林と田園に挟まれた園舎は、空き店舗を改修。木造2階建てで、屋内外に木をふんだんに使った造り。保育室3室などを備える。
子どもたちがそれぞれに合った多彩な体験を重ね無限の可能性を身に付ける場、保護者が他の保護者や保育スタッフとつながり合い肩の力を抜いて笑顔になれる場に-。みんなの「夢」が動きだす。

周囲が後押し決意を固める

平川昭さんが穂高町立保育園(当時)に保育士として勤めようとした20歳の時は町内に男性保育士がおらず、近隣市町村でも10人に満たなかった。初めは「男性職員用のトイレも更衣室もない」と渋られたが「それでもいい」と押し切り、保育士として勤め始めた。
着任すると、スポーツが得意で柔和な性格の平川さんは園児の人気を集め、「廊下を歩くと他のクラスの子も集まってきた」。当時の同僚の1人も「子ども受けがよかっただけでなく、女性保育士にとっては新鮮で貴重な存在。園全体の雰囲気を和ませてくれた」と振り返る。平川さんは保育に情熱を注ぎ、充実した日々だった。
一方で、10年目を迎える頃には、ある疑問が生じる。妻も保育士のため、自身の2人の子どもに関しては「行事も全てじいちゃん、ばあちゃん頼り。他人の子を世話して、自分の子には向き合えていない」。そのころ腰を痛めたこともあり、悩んだ末、別の事務系部署に異動した。
10年たち、子どもが成長するにつれて保育に対する強い思いが再燃。再度保育園への異動を希望する選択もあったが、一昨年3月に思い切って退職。私立や市外の保育園で働く想定だったが、平川さんの熱意を知った知人の1人が「自分で経営してみたら」と提案。周囲の後押しもあり、独自の保育園を経営する決意を固めた。

子育て世代の当事者目線で

空き店舗を利用した園舎は、玄関前の松林を伐採し、傷みが激しかった屋根や外装、内装を全面的に改修。作業は平川さんの知人の業者ら十数人が「材料費くらいでいいよ」と引き受けた。
保育スタッフも、かつての同僚や友人のネットワークで市内の20~40代が集まった。保育園や幼稚園で実務経験があり、出産を経て仕事復帰する「子育て真っ最中」の人がほとんど。当事者としての目線と共感を持ち「安心安全、子どもが主役の保育」に意欲的だ。
平川園長はスタッフに「得意なことを持ち寄り、苦手は別のスタッフや外部の人材に任せて。その分、園児一人ひとりにゆったり手厚く接して」と話す。
保護者の負担軽減も図る考え。給食の献立は、隣接する就労継続支援事業所「むぎのねAZUMINO」(管理者・狩野ナギラさん)と提携、地元の食材を使う。午睡には簡易ベッドを使い、布団の持ち込みは不要に。園との連絡や成長記録の保存などをスマートフォンでできる専用アプリも導入する。
元病棟保育士で2児の母のスタッフ高橋亜弓さん(35、有明)は「自分の体験をもとにして親身に保育に当たりたい」。平川園長は「さまざまな刺激が得られる環境を整え、選択肢を多く持つたくましい子どもに育つようにサポートしていきたい」と話している。