人形劇で命の大切さ伝える「ちいばあ」の「10円劇場」

学生時代から始め、約半世紀
人形劇「がらくた座」 木島知草さん(松本市)

子どもは10円、大人は100円で人形劇や紙芝居を楽しめる「10円劇場」。開いているのは、松本市を拠点に全国で性や人権、命の大切さを伝える人形劇「がらくた座」を主宰する木島知草さん(68、同市井川城3)だ。
コロナ禍で公演機会が減り、今は月に1度、自宅で公演。暖かな日は庭で、天気が悪い日は室内で、心温まる物語を披露する。
劇に登場する個性豊かなキャラクターたちや道具は、すべて手作り。素材は古くなった靴下やストッキング、傘、段ボール、古着、ボタンなど。木島さんは一つずつ丁寧に仕上げ、命を吹き込む。
学生時代から始めた人形劇は、今年で49年目。若い頃の愛称「ちいねえ」は半世紀近くたって「ちいばあ」となり、円熟みを増している。

幼少時代から人形劇に夢中

「ちいばあ」こと木島知草さんが人形劇を始めた原点は、子ども時代にある。
島根県浜田市で生まれ育った木島さん。まだテレビのなかったころ、紙芝居屋さんが5円や10円で駄菓子を売り、それを買うと紙芝居をやってくれた。楽しくて笑顔になれる紙芝居が「大大大好きだった」といい、紙芝居に憧れを抱いた。小学校の時、初めてテレビで見た人形劇に感動。小学生ながらに自分で人形や紙芝居を作り、声色を変えてまねすることに夢中になった。
日大芸術学部に入学し、18歳で自分でサークルを立ち上げて始めた人形劇。当時アルバイトをしながら廃品を集めて人形を作っていた。物語は、自分の感じた子どもたちの世界に伝えたい大切なメッセージを盛り込んで作る。今でもそのやり方は同じだ。「子どもたちと受け答えしながら対話するような劇を日々心掛けている」と話す。

性の多様性を楽しく教える

人形劇場には、幼児から高齢者までさまざまな人々が訪れる。性や人権、平和、命について、年齢に合わせた内容を用意。こうやって生まれてきたという「赤ちゃんの誕生」については、年齢問わず必ず話す。タブーが多い「性」の話も、人形劇という手法で明るく楽しい会話の中で知識や多様性などを伝えている。
2月9日には、塩尻西小学校(塩尻市大門五番町)で木島さんが6年生58人とその保護者を前に「命の授業」をした。LGBT(性的少数者)、HIV(エイズウイルス)、命の大切さ、思春期の特徴…。「違いを認め合って助け合って生きる」をテーマに、手作りの人形や紙芝居で分かりやすく話した。
HIVについては、手袋で作った2つの人形を使い、2人が共に生きる姿や予防について説明。体操や手話など挟み、児童とコミュニケーションをとりながらの授業だ。児童には「自分らしく幸せになるために生まれてきた。他人と比べず、自分の成長を喜んで生きていってほしい」と強調。保護者には、思春期の子育てについてのアドバイスをした。
松本市を拠点に全国各地を巡業している木島さん。昨年はコロナ禍で大きな公演は中止や延期となったが、今年は23年間にわたって公演の手伝いをしてくれているスタッフの松澤尊弘さん(48)と一緒に、コロナの収束状況をみながら全国巡業を再開したい考えだ。
「体が動く限りは現役でずっとやっていきたい。望まれるなら、どんなに小さな場にも行きます」。そう話す「ちいばあ」の目が輝いた。「がらくた座」℡0263・26・3601