3年D組「松本戦隊マッチュウジャー」

松本のヒロイン 全力で活動

松本の魅力を発信し松本を元気にするために活動する、信州大学附属松本中学校3年D組の生徒が扮(ふん)する「松本戦隊マッチュウジャー」。コロナ禍で、とうとう松本市内で一度も市民の前に姿を見せることができず、活動を終えた。
だが、別の形でマッチュウジャーの使命は果たした。さまざまな事業所を取材、PRチラシを作り大型商業施設や市の観光案内所に置いた。「お手本」とした「高校戦隊テックレンジャー」を生んだ飯田OIDE長姫高校から声が掛かり、飯田市内で松本のPRも。
「できることを、全力で」。そんな言葉を掛け合って、松本地域に住み、働き、学ぶ人のために生まれたマッチュウジャー。「松本のヒヒロイン」たちはコロナ禍による活動の制約をはねのけ、たくましく成長したようだ。

地域と関わり 自分たちらしく
公演は白紙でも「できることを」

マッチュウジャーは3年D組の生徒たちが監督、脚本、出演、衣装、音響などすべてを手掛ける戦隊ショーとして発足。「松本の良さを伝える」をテーマに取り組んできた「総合的な学習の時間」の集大成として、松本市民の前で公演する計画だった。
1年生の時にマッチュウジャーを含む4案を検討、2年生の初めにマッチュウジャーを採択。10月の文化祭に向けて、休日に地域の公民館を借りたり夏休みに学校に集まったりして準備した。
脚本は本番の1週間前まで練り直し、「最後の方はどれが決定稿か分からなくなるくらいだった」と、脚本係の宮坂怜花さん。9つの係がそれぞれ全力を尽くした。昨年2月、信大附属幼稚園と小学校で披露。戦闘シーンを長くするなど、子どもたちが楽しめるよう工夫した。
その後、世はコロナ禍に。「3年生になったらいろんな場所で」との計画は白紙となった。「なんとかしてあげたい」。担任の三石啓介教諭は8月末、生徒たちに松本市城西のゲストハウス「tabi─shiro(タビシロ)」の小澤清和さん(39)を紹介した。「コロナ禍でも、すべてが無理なわけではない。できることを考え行動していれば、きっと何かを得られる」。小澤さんは生徒たちにそう言葉を掛けた。
「市内のお店のチラシを作れば、みんな喜ぶんじゃないかな」。小澤さんがふと漏らした言葉に反応し、居酒屋、うす焼き店、洋菓子店、銭湯、美容室、観光バス会社など7事業所に足を運び、チラシを作った。「ショーの企画よりも、さらに幅広く地域と関わり、貴重な経験を得た」。観光バス会社を取材した伊皆萌香さんはそう振り返る。
そして飯田OIDE長姫高校から誘われ、飯田市内のイベントでステージに立つ機会を得た。11月末に飯田で披露したショーが、マッチュウジャーにとって最初で最後の一般向けステージとなった。「一生懸命やっていたから、周りが助けてくれたのだと思う」と、音声を担当した小林知樹さん。このステージでは、チラシを作った全7事業所が劇中に登場するシナリオを制作。飯田市民に松本の多様な魅力を伝えた。

今年2月25日、生徒4人が飯田公演の動画や色紙、マッチュウジャーのグッズを携え、タビシロを訪れた。
「地域で公演はできなかったが、チラシ作りを通して、地域の人に僕らの活動や思いを認めてもらえたと感じている」。タビシロのチラシを作った吉江智也さんがそう伝えると、小澤さんは「松本の小さな店や企業を覚えて大人になってほしい。これからも親(のような縦の関係)でも友人(横の関係)でもない、斜め上の関係にある人との交流を大切に」と言葉を贈った。
「うまくできる、できないは二の次。みんなで全力を尽くせたことが大きかった。私たちらしい、いい『創造』ができたのかな」と、マッチュウジャープロジェクトをまとめた永田紗菜さん。教室に張られた「一人で立って皆で歩こう」の文字が輝いて見えた。

【マッチュウジャー】
松本を悪から守る女性戦士5人。レッドはリンゴ、ブルーはわき水、グリーンは松本山雅FCと松本一本ねぎ、イエローはそば蜂蜜、ピンクは松本城の桜を劇中でPR。うす焼きを食べると体力が回復する。必殺技は山賊焼きがモチーフの「サクサクサイクロン」。倒した悪者にうす焼きを振る舞い、改心させて任務が完了する。