介護福祉士 母校の窮状に指南役志願

松本医療福祉専門学校出身 葛城さん
2年後には閉校に

母校の窮状に居ても立ってもいられなくなり、無償で指南役を買って出た。
松本医療福祉専門学校(松本市渚2)出身の介護福祉士、葛城卓真さん(29、岡谷市)は2月、同校で開いた特別講座で初めて教壇に立った。きっかけはMGプレスの記事。コロナ禍で、高齢者施設での実習ができなくなったのを知った。
母校に連絡し「何か協力できることはないか」と志願。実践的な技術やコミュニケーションなどを教えた。
同校は2021年度から募集を停止、22年度末に閉校する予定。葛城さんの講義には、自らを育ててくれた母校への感謝もこもっている。

実習ができない後輩のために
技術や気持ち伝える

通常なら、県内各地の高齢者施設に延べ5日間、実習に行く予定だった松本医療福祉専門学校の1年生14人。葛城卓真さんの計らいで、実習に替わる異例の特別講座が校内で開かれた。
まずは、2人1組でゲーム形式での自己紹介。心を開く大切さを学ぶ狙いだ。5分間、1人がひたすら話し、もう1人は黙ってとにかく話を聞く。ここでの学びは、カウンセリングにも活用されるコミュニケーション技法の「傾聴」。高齢者に限らず、真摯(しんし)な姿勢で相手の話を聴くことが重要で、信頼関係を築くだけでなく、自分自身を見直すきっかけにもなるという。
葛城さんは「介護現場で高齢者との会話はとっても重要。認知症であっても否定しないで受け入れて、常に相手に寄り添う気持ちを忘れないで」と学生たちに語り掛けた。
実技では、皮膚が薄くて敏感なお年寄りに検温する際の腕の触り方、ベッドにあおむけに寝た状態から横向きにさせる体位変換、車いすへの移乗、寝たまま下に敷いたバスタオルを交換するこつなどを実践。さらに、多くの医療福祉従事者が腰痛に悩まされている実情を紹介し、力任せではなく、利用者の体の動きや力学を応用した介助技術も伝授した。
「現場で実習ができずに気を落としていたが、葛城さんのおかげで、それ以上のものが学べた」と、医療秘書学科の山岡彩音さん(19、安曇野市穂高)。「将来は患者さんを笑顔にできるように診療所や病院などで働きたい」と話した。

介護職に情熱 母校が出発点

葛城さんは現在、辰野町の特別養護老人ホームで働いている。高2の秋、母に進路相談した際に勧められたのが介護福祉士だった。その後、くも膜下出血で急死した母との「約束」通り、介護福祉士を目指した。
毎日、茅野市の実家から電車で松本医療福祉専門学校に通学。がむしゃらに勉強し、国家試験に合格した。介護技術をもっと極めようと、就職後は無理に人を抱え上げない「ノーリフトケアコーディネーター」(日本ノーリフト協会)の資格も取得し、県内で普及活動にも取り組む。
「今こうして働くことができるのは、この学校があったから。コロナ禍で後輩たちが実習にも行けないことを知り、何かしてあげたかった」。中信地域に接する辰野町でも配達されているMGプレスの記事に目が留まり、母校に駆け付けた。
そんな母校が、近年の若年人口減少や志願者減などを受け閉校する見通しに。「学校がなくなっても、ここで学んで良かったと思える日が必ずやってくる」と後輩たちを励ます葛城さん。「これ以上、情熱を持ってやれる仕事はほかにない」。そう言い切る顔に、介護職に対する誇りがのぞいた。

【松本医療福祉専門学校】
1998(平成10)年4月に国際福祉専門学校として開校。2009年度に現学校名に改名した。介護福祉、医療秘書の2学科2年制で、学校法人未来学舎(松本市渚2)が運営する。閉校後、介護福祉学科はなくなり、医療秘書学科は教育課程を見直して22年度から同じ学校法人内の専門学校未来ビジネスカレッジに新たに組み入れる予定。