「れんげの家」こだわりのトートバッグ 作り手「総力戦」で

棚にずらりと並んだトートバッグ。50個あるとすれば、その一つ一つが他とは違う色を持っている。それはまるで人間の個性を表現しているかのよう─。
安曇野福祉協会(安曇野市)が運営する就労継続支援B型事業所「れんげの家」が作るトートバッグは、手染めの帆布を使い、持ち手はヌメ革というこだわりの品だ。色の多彩さや使い勝手の良さなどが喜ばれ、リピーターも多い。
作り始めたのは7年ほど前。以来、作業工程やデザインなど試行錯誤を重ね、販路も広げるなどしてきた。
安曇野市のふるさと納税返礼品にも利用されている「れんげの家」のトートバッグ。松本市や安曇野市のセレクトショップなどでも常設販売されている。事業所を訪ね、「作り手の総力戦」で生まれるバッグの魅力に触れた。

多彩な色 使い勝手の良さ魅力

各自に合わせ工程を決める

安曇野市豊科の「れんげの家」には、20~60代の精神障害のある19人が通っている。自主製品は、トートバッグなど縫製品と、菓子などの加工品だ。
アイロンがけ、ミシン縫い、型紙に沿って待ち針を付ける…。縫製の担当は利用者16人と職員4人。「1個のバッグができるまで10人以上が携わっています。いわば総力戦」と小林珠美所長(47)。
開発当初はバッグができるまでの工程を1人で担ったが、作り手の負担が大きく完成品に差があることから各自に合わせた工程を決めた。
バッグ持ち手の革を縫い付ける42歳の女性は「最初は1個付けるまで40分かかったが、今は同じ時間で9個できる。革は硬くて大変だけど、上手にできるようになるのがやりがい」。カラフルな色も作業の楽しさに一役買っているという。
「れんげの家」で作っている縫製品は6種類ほど。財布や小物などを入れる小さめのバッグ「仕分け美人」、コロナ禍を受け発売した「ティッシュマスクポーチ」などもあり、限定商品も企画する。
魅力の一つが豊富な色合いだ。帆布は化学染料で染めた後、同市特産のタマネギの皮の煮出し汁で2度染めする。タマネギの皮は利用者の家族やバッグ愛用者などが届けてくれるという。

「おしゃれ」で高品質なもの

染色はサービス管理責任者の古井利幸さん(43)が担当。「染料を混ぜたり、タマネギの量を変えたり、1枚ごと違う色は手染めならでは」という。
れんげの家は1992(平成4)年にオープン。帆布トートバッグ作りは2014年から始めた。当時の職員が「帆布を染めた商品を作ってみたら面白そう」と提案し、染め物店を閉めたボランティアから大量の染料を贈られたのもきっかけになった。
「少しでもおしゃれで高品質なものを作り大勢の人に使ってもらいたい」と、バッグを企画する目標工賃達成指導員の上野菜々美さん(39)。さまざまな店に出掛けてバッグのデザインを考える。作家などが出品する「安曇野スタイル」「クラフトフェアまつもと」などにも出店。安曇野市や松本市、県外のセレクトショップでも常設販売してもらえるようになった。
県の統計によると、県内就労継続支援B型事業所の月平均工賃は1万5970円(2019年度)。れんげの家は縫製品と菓子などを合わせて2万4902円(同年)で、時給換算では704円と県内トップクラスだ。
工賃アップだけでなく、社会とつながる実感が利用者の励みになる。しかし、本年度はイベントでの対面販売はコロナ禍の影響で全て中止に。しばらくは我慢の日々が続く。
「地域の皆さんに支えられて今がある。障害者施設の商品だからではなく、すてきだから買うというようになりたい」と小林所長。これからも皆で力を合わせ、「世界に一つだけのバッグ」を作っていく。れんげの家℡0263・72・7170

【メモ】
【バッグの主な販売店舗】あづみのコミューンチロル(安曇野市豊科・31日まで臨時休業)、acorn(同市穂高)、手仕事商會すぐり(松本市中央3)、安曇野ちひろ美術館(松川村・入館料必要)。トートバッグはS3000円台、M4000円台、L5000円台。