「学校行きたくない」─親はどうする?

子どもとのやりとりで使う「がんばりシール」を手にする戸谷さん。子どもと関わるときに使う小道具を車に詰め込む

不登校支援を続ける戸谷京子さんに聞きました

子どもが学校に行き渋る、不登校になってしまった─。人知れず悩んでいる家族もいると思います。神奈川県などの小中高校で30年以上、保健体育の教員をしながら、不登校の児童生徒の対応や特別支援学級を受け持ち、現在も中信地方の不登校支援をしている戸谷京子さん(66)に、子どもが「学校へ行きたくない」と言ったときの親の対応などについて聞きました。

諦めず関わり続けて

子どもが「学校へ行きたくない」と言ったら、親はどう対応するといいですか

その子がどのくらいのレベルで学校を嫌がっているのか、わがままのように言っているのか、それとも何かつらいことがあったように言っているのか…。対応の仕方は子どもの性格などによって違い、ケースバイケースです。
親が子どもの側にぐっと寄り添って共感する方がいい場合もあれば、はっきりした口調で言った方がいい子もいます。学校に連れて行っていいかどうかも、親子の関係、原因、先生や友達など学校側の受け入れ態勢によっても違います。
【聞き役になる。即答しない】
親はとかく子どもを自分のもののように思っている面がありますが、それは違います。成長過程にある一人の人間として尊重することが大前提です。その上で、どうしてそんな気持ちになっているのかと、子どもの話をよく聞いてください。
また、つい頭ごなしに「あなたのことはよく分かっているのだから、こうしなさい」と命令口調になりがちです。感情に任せて言い返す人も多いです。「そうかぁ、お母さんもいい方法がないか一緒に考えるから、時間ちょうだい」など、次につながる言葉を伝えてください。子どもも「自分のために考えてくれているんだ」と分かると、うれしく思うはずです。
売り言葉に買い言葉にならないよう、落ち着いて考えることが大切です。
私は普段、「子どもの手を引いたり、背中を押したりして促すようなことはしない」ことを心掛けています。人間だから、言葉のやりとりで相手に納得してもらう。小さい子でも障がいのある子でも、納得すれば自分で切り替えて次の行動に移れます。
【試行錯誤して、しっかりとした親子関係を築く】
「子育ては料理の味付けと同じ」です。前に作ったカレーが辛いと言われたら、「今度はちょっと甘くしよう」などと次の料理に生かしますよね。それと同じで「ちょっときつく言い過ぎたから今度はこう言おう」とか、そういう繰り返しをしながら、しっかりとした親子関係を築いていくことが大事です。
親は諦めないで、あの手この手を工夫し、それを子どもが納得してやったときは「うれしいよ、ありがとう」と言葉で伝えてください。否定的・批判的な言葉は使わず、肯定的な言葉を掛けましょう。親はそのくらいリラックスして、うんと広い気持ちで接してください。
もしお子さんが不登校になっていたら、「今こういう子だから」と絶対視しない、決めつけないことです。人生の長いスパンで考えれば、ここ数年なんてほんのわずかな時間、足踏みしたって問題ないです。将来いろんな可能性を秘めている子だと尊重してください。
以前担当した中学校で、いじめに遭ってほとんど登校できなかった子がいましたが、お母さんが頑張り続けて本人が希望する通信制高校に入学できました。周りが諦めずに子どもへの関わりを続け、一緒の時間を過ごせば最後は子どもも応えてくれます。

進級・進学を控えた春休み、気持ちが落ち着かない子もいるかもしれません。親はどのような心構えで過ごせばよいでしょうか

「お休み」って幸せ感がほしいですよね。子どもが自分の中で幸せ感や充実感、満足感が残るような休みにしたいです。何をしてそれが得られるかは、子どもによっても家庭の事情によっても違います。大切なのは「4月からのことを考えて」ということです。
例えば「勉強が遅れちゃっているからこの休みで挽回しよう」「得意なことを伸ばそう」でもいいです。4月からまた勉強を頑張らなきゃいけないから、「今は遊び100%にしよう」とか「祖父母の手伝いをいっぱいして人の役に立とう」でもいい。有意義に過ごしたという充実感があると、それが自信になって次への切り替えができます。
【わが子に自信を持って接して】
一番もったいないのは、親がおどおどしていること。例えば子どもがどこかへ行きたいと言っても、家庭の事情で出掛けられないかもしれません。でもそれは仕方がない。周りと比べないでください。「どこにも連れて行ってあげられなかったけど、とても助かったよ。ありがとう」と言葉で伝えてください。
愛情を持って将来のことを考えたとき、「これだけは勉強をしておいてほしい」と思えば、その理由をよく話して、自信を持ってやらせてください。
親御さんには、「あんなに痛い思いをして産んで、命を懸けて大切に育ててきたのはお母さん、お父さんなんだよ。だから自分の子に良かれと思ったことは自信を持ってやって」と伝えたいです。わが子を思う親の心にはかないませんから。

祖父母など親以外の人が関わるときは、どう接すればいいでしょうか

「学校に行きたくない」と言っているときは学校の話はしない、その子が引っかかっていることや落ち込むような話題はしないことです。その子が好きなことや楽しいこと、経験したことを話題にして、できれば一緒にやってみる。できなくても、その場にいてあげるだけでいいです。
そのとき大人は教えてやろうと思わず、「すごいね!おばあちゃんはできなかったよ」と軽く言うと、子どもは「できない(学校に行けない)ことを、そんなに気にしなくていいんだ」と気持ちが楽になるはずです。また、心からのすごい!は子どもに伝わり自信につながります。
【見守られているという安心感が心の成長につながる】
祖父母でも親戚や近所の人でも、その子を大切に思っている人が、その場に一緒にいて見守っているというのは、すごく大切なことだと思います。その子が好きで自然にやっていることを、愛情を持って温かく見守る。「なになに?」「続き知りたいな」などと話しかければ、子どもは関心を持ってもらえたとうれしくなります。
特別なことをしてあげようと思わず、その子のやっていることをほほ笑んで見守り、生きる時間を共有する。それはすぐに結果として見えないかもしれませんが、子どもが育つ上でとても大事なことですし、お互いに幸せですよね。

【プロフィル】
【とや・きょうこ】1978~2002年、川崎市の公立学校で保健体育教諭を務め、不登校や家庭に問題を抱える子どもの担当や特別支援学級の担任をする。02~10年、実家がある長野県で親の面倒を見ながら長野市青少年錬成センターの館長などを務める。10~17年、「子どもともう一度関わりを持ちたい」と神奈川や新潟などの公立学校で保健体育、不登校の子どもやいじめ問題の対応にあたる。