大町岳陽高2年生「信濃大町100人衆インタビュー」作成

なぜこの施設を作ろうと思ったのですか」「店名の由来は」「大町の魅力とはズバリ何ですか」
大町市中心市街地にある商店主や施設運営者、芸術家ら20人に、緊張した表情で質問する高校生。まちを思い、動く人の言葉を聞くたび、生徒たちの目の輝きが増していく。
まちづくりの担い手である「地域人」に光を当て、発信する小冊子「信濃大町100人衆インタビュー」作りに向けた取材風景だ。「地域人」を掘り起こし、人を通じてまちの魅力をあぶり出して伝える。作り手は大町岳陽高校2年生10人。
地域の担い手が市街地活性化のビジョンを話し合う場づくりにつなげたい|と、市が呼び掛け、授業の地域探究活動の一環で取り組んだ。高校生がまちの人を知り、見えてきた地域の魅力とは─。

熱意に触れ気持ちに変化

ビール製造など念入りに下調べ

大町市の中心市街地に2019年にオープンした「北アルプスブルワリー」。昨年10月末、醸造所併設のパブのカウンター席に男子生徒3人が座り、成沢隼人専務(37)に話を聞いていた。
インタビュアーは、同市で生まれ育った荒川拓夢さん(17)。年齢的にまだ飲めないクラフトビール製造への質問はちょっぴりハードルが高そう。だが念入りに下調べをし、「製造過程が一番大変だった商品は」「特徴的なラベルだが意識していることは」などの質問を投げ掛けた。
成沢さんは、一緒にブルワリーを立ち上げた県外出身の仲間が大町の水のおいしさに注目し、「大町の水でビールを造ったらどんな味になるのか」との思いが原点|と説明。高校卒業後に上京し、故郷にUターンした理由も聞くなど、荒川さんは成沢さんの人となりや地域への熱いまなざしも感じ取ったようだ。

3役こなす生徒市職員の協力も

2年生10人は、昨年8月から毎週火曜、地域のライターやカメラマン、デザイナーを講師に、取材の基本や紙面デザインなどを座学やワークショップで学んだ。記者、カメラマン、編集者の3役をこなす生徒に、市職員が伴走や助言の立場で加わり、信州地域デザインセンター(UDC信州)も協力した。
10、11月に行った「地域人」へのインタビューは、生徒1人が2人を担当。10年後の野望や大町の展望は共通する質問項目とし、仕事や活動の内容、移住のきっかけ、好きな場所などは、各自の視点で尋ねた。
「信濃大町100人衆」のタイトルは、江戸時代、まちを守り支えた10軒の有力者とされる「大町十人衆」に由来。現代版十人衆のように、まちを考え、活性化に動く人たちが大町の将来像を共に考え、つくり出す場につなげる願いを込めた。

戻ってきたいと思える場所に…

取材時は緊張気味だった荒川さん。完成した小冊子を手にした表情と声はすがすがしかった。当初は「地元にはあまり思い入れがなかった」と振り返るが、まちをつくる人の言葉と熱意に触れ、記事にまとめるうちに、気持ちに変化が生まれた。「進学で離れても、戻ってきたいと思える場所になった」
時の流れが緩やかで、静けさがあり、雄大な山々を日々仰げる環境…。地域人が共通して挙げた地域の良さを「ずっと当たり前のことだと思っていた」と語るのは、塩島くるみさん(17、白馬村)。人を知るとその人の言葉がぐっと心に迫る。「将来も地元にいてもいいかなーと、選択肢が増えました」
講師でライターの稲澤そし恵さん(40、同市)は「みんなも100人衆の一人。大町のことをいつもどこかで考えていられるような人になってほしい」。アドバイザーの新雄太東京大大学院特任助教(38)は「足元にある地域の価値を見つめることは今後の財産になる」と総括した。
まずは20人、そして100人目指して─。来年度以降もインタビューは続ける予定だ。

【信濃大町100人衆インタビュー】 地域人20人を1ページずつ紹介。店構えや料理、作品などの写真を大きく載せた。A4判28ページで、市役所商工労政課で無料配布。市ホームページにも掲載している。