【像えとせとら】松商学園高校 今井五介翁像 (松本市県3)

体育の授業などで現在も使われている国登録有形文化財の旧講堂(1936年築)。その一角にある扉が開かれると、高さ約3・4メートルの巨大な像が現れる。銅像のようだが、実は着色された石こう像。立派な背広とコートを身にまとい、長いあごひげは胸元まで伸びている。

学校の恩人 普段は扉の向こうに

同校は1898(明治31)年、教育者で実業家の木澤鶴人が創設した。1911(同44)年に経営が苦しくなった時、多額の財政支援をして立て直したのが、現在のイオンモール松本(中央4)の場所にあった片倉製糸松本製糸所の創設当初の所長で「製糸王」と呼ばれた今井五介(1859~1946年)だった。
今井は製糸で得た利益を独占せず、鉄道やガス、電気などのインフラ整備や教育などに還元し、現在の松本の基盤を整備した。旧講堂と同時に建てられた同校の木造本館と、鉄筋コンクリート造りの柔剣道場も国登録有形文化財だ。
存在感がすごい像だが、扉が公に開かれるのは、開校記念日(4月18日)に学校関係者が集まる式典の時だけ。そのため像の存在を知らずに卒業する生徒も多いといい、私もOGの1人だが、在校当時は知らなかった。
旧講堂で練習している県内強豪の女子バレーボール部は、学校の恩人の像の周りを清掃し、像の前で黙想してから練習しているらしい。とても気合が入りそうだ。