児童文学「モモ」 コロナ禍で大人が新たな読者に

盗まれた時間を取り戻そうとする少女が主人公の児童文学「モモ」が、昨春から異例の売り上げを続けている。出版社によると、特に県内で伸びており、中信の書店でも売れ筋上位に名を連ねた。日本語版刊行から45年。コロナ禍で時間の使い方を考えた大人が新たな読者になっているという。
モモは、ドイツ人作家ミヒャエル・エンデ(1929~95年)の代表作。岩波書店によると、昨年3月の一斉休校の時期から部数が伸び始めたという。8月にNHK・Eテレの「100de名著」、秋には日本テレビ系のドラマ「35歳の少女」で取り上げられたのも、注目が集まったきっかけのようだ。
県内では、NHKのローカル番組で扱われたことが大きいと岩波書店はみているが、はっきりしたことは分からないという。
平安堂あづみ野店(安曇野市豊科南穂高)は昨夏、児童書の書棚以外に一般書コーナーにも目立つように置いたところ、例年の数十倍の部数が売れた。
佐々木紀行総店長は「コロナで人に会えなくなった人たちが時間の過ごし方を考え直し、モモを手に取るようになった。大人にも訴えかける力がある。児童書として扱ってきたが一般書だったと気づかされた」と話す。
都内から信州にUターンしてきたばかりの記者も昨年、初めて読んだ。序盤、人々が時間どろぼうから節約を勧められて「無駄な時間」を削り、人との豊かな交わりを失っていく。人ごとではないところを感じ、ページを繰る手が進んだ。
丸善松本店(松本市深志1)では、首都圏の系列店舗に引けを取らない数が売れ、昨年7月~今年3月では全国5番目だった。ブーム的な売れ行きは年明けに落ち着いたが、3月に再び一般書の売り上げベスト5に入ってきた。「新年度を前にした贈り物が多いのでは」と土屋容店長。
新しい環境に向かう際に読まれる本としても浸透したようだ。