腕時計集め半世紀「コレクション」数百点に

古い腕時計を集める澤田孝則さん

集め始めて半世紀、松本市新村の澤田孝則さん(64)の古い腕時計は数百点になった。
「発掘から始まった」と冗談めかす。少年時代、町の時計店に足を運んでは、腕時計が放り込まれた箱をドライバーでかき回した。修理用の部品を取るための時計たち。その山をガラガラと揺するうちに、見たことのない型が顔をのぞかせる。タダでもらえた。
熱心さに感心し、店主がわざわざ仏壇から出してきてくれた時計もある。大人になり、時計集めはお金をかける趣味になった。とりわけセイコー製は体系的に集めた。製造から50~100年ほどの百数十点に上る。
歴史を伝える資料としての自負もある「澤田コレクション」。澤田さんは定年退職後、その行く末を考え始めた。

製品リスト眺め 穴埋め収集に熱

初めて自分のものにした腕時計は、分解して壊してしまった。
小学6年のとき、澤田孝則さんは、父親にせがんで古い「ラドー」を譲ってもらった。スイスの高級品は文字盤のマークが動いた。「ちっちゃくて動くものが好きだった」。仕組みを知りたくて中を開けた。
分解する時計を求めて時計店に通うように。箱の中から探り出すうちに、時計そのものの美しさに引かれるようになった。
社会人になると、休日に時計店を巡った。ある日、展示会場で年表を手に入れた。「セイコーウオッチの歩み」。明治29(1896)年から昭和43(1968)年まで、年によっては月単位で製品名が並んでいた。
澤田さんは、時計集めを昆虫採集になぞらえる。美しい昆虫が並ぶ図鑑は美しい。製品リストを眺め、持っていない穴を埋めたくなった。
主に長針、短針、秒針の3針でできた、白文字盤を集め、150点を超えた。「でも、本格的なコレクターに比べたら、足元にも及ばないですよ」。あくまで個人の楽しみ。仕事が忙しくなり、押し入れにしまいっ放しになった。

価値を損ねない引き継ぎ先探す

定年を迎え、久しぶりに対面した。古くは大正期から昭和の高度成長期の機械式腕時計たち。1970年代にクオーツ時計が席巻してからは見向きもされない時期が長かった。それが、ずいぶん評価が上がっていた。
時計店の厚意から始まったコレクション。歴史に触れて機械式の魅力をより理解してもらうため、地元にそのまま返せればと思い、まず松本市時計博物館を考えた。だが、古い時計も動かし続けると聞き二の足を踏んだ。部品が摩耗し、交換したらオリジナルの価値は減じてしまう。機能は回復するかもしれないが、「それはサイボーグにするような違和感がある」。
発掘から組み立てたコレクションは今、知人宅で一時的に保管している。「美しい腕時計の歴史をなんとか美しいまま残したい」と引き継ぎ先を探す。