【像えとせとら】創作道祖神「愛」 (松本市美須々)

若手職人が挑戦した新しい形

国道143号と県道浅間川添線、市道「こまくさ道路」が交わる美須々交差点。中央に三角形の広場があり、その中ほどに石像が立っている。車で通るたび気になっていた。遠目にはカエルのようにも見えたが、近くまで行って驚いた。
向かい合う2人が互いの手を取り、踊っているように見える。台座にはハート形の水受け?が彫られている。作品名は「愛」。1993年の「国宝松本城400年まつり」の際に、現在の松本城公園に飾られた。そして、この像はなんと「道祖神」だという。
まつりの実行委員会から、道祖神の制作を依頼された松本石匠組合青年部の職人たちが、「既存の概念にとらわれない、新しい道祖神を作ろう」と、技術を駆使して作り上げた。
「あの時に育まれた仲間の絆と『挑戦する気持ち』は、今も組合員に受け継がれている」と、当時青年部長だった山口尚徳さん(63、同市)。当時市職員として実行委事務局の会場施設係を務めた大石幹也さん(64、同)は「石職人たちの気概や、城の石垣を築いた先人への敬意を感じた」と振り返る。
像はまつりの後も保管され、現在の設置場所が公有地になった際に、実行委が寄贈した。若手職人たちが創った新しい形の道祖神は、祭られる場所を得た。