【ガンズリポート】ユースアカデミー 「文武両道」学業を支援

ピッチでも教室でも成長をサポートします─。松本山雅FCのユースアカデミー(育成組織)が、U|15(中学年代)選手の勉強を支援する態勢をつくった。「文武両道」の育成方針を具体化する、全国のJクラブでも珍しい試みだ。
山雅の練習拠点の松本市かりがねサッカー場。夕方、練習着で来たU|15の選手たちが、グラウンドではなく会議室に入っていく。長机で問題集を解き始めた。
学習サポートは原則週2回で火曜が数学、金曜は英語。希望者が練習前に集まる。取材したこの日は数学で、松商学園高校の非常勤講師、二村昭平さん(69)が選手らを迎えた。同校サッカー部の元部長でもあるベテラン教師だ。
始まってしばらくして、3年生の竹森賢志(さとし)選手(14)が手を挙げた。「八角形の内角の和」について質問する。一緒に公式を確め、「どうせ覚えるなら意味を理解しよう」と二村さん。個人授業が始まった。
仲間で教え合ったり、黙々と取り組んだり。それぞれに進め、勉強は1時間で終わり。竹森選手は「分からなかった解き方を質問できた」。本年度は受験生。塾にも通うが、山雅の仲間と一緒だと、学びやすさを感じるという。
クラブが学習サポートの態勢づくりに動きだしたのは昨年末。選手は平日2時間練習し、週末は試合や遠征とサッカーに膨大な時間を費やしているが、育成組織を統括する山﨑武アカデミーダイレクター(55)は「文武両道を掲げているのに、『文』のためにこれといってやっていないことに気づいた」と言う。
「松本市が『学都』をうたう文化的背景の中に山雅もある。サッカーも頑張るし、勉強も頑張るという選手こそ応援される」と山﨑ダイレクター。
まずは、U─18(高校年代)チームへの昇格と、高校進学の試練が同時に迫る中学2、3年生をサポートすることにした。対象の40人から希望を取り、英数それぞれ10人余りで3月にスタートした。
元高校教諭でもある山山﨑ダイレクターは「1回1時間の学習でどのくらい効果が出るか分からないが、やり抜く力を学業でも身に付けてほしい」と話す。