故郷で初個展 HILO中津川さん

宝石が放つ光独自の技法で

無数の光を放ち、さまざまな色に輝くダイヤモンド─。実はこれ油絵。描いたのは、松本市埋橋の画家、HILO(ヒロ)中津川さん(34)だ。
中津川さんは宝石の光を表現する作品を制作する異色の画家。東京芸術大学大学院油画修士課程を修了してから約5年たった2017年、「宝石って描くことができるのか?」と、ふと抱いた疑問から宝石をモチーフにした活動が始まった。
宝石の勉強をしながら、宝石が放つ透明な光を、絵の具の色でどう表現するかを試行錯誤。その結果、「半立体作品」を描く独自の技法を確立した。
「絵画の中の新しい光を表現したい」と意欲を見せる中津川さん。23~26日、故郷で初となる個展を同市深志3のギャラリー信濃で開く。

「新しい光表現したい」活動拠点を松本へ

HILO中津川さんは、昨年1月に活動拠点を都内から、小・中学、高校時代を過ごした松本市に移し、「アトリエ博」を設立した。
数種類のダイヤモンドの写真を見て、頭の中で作品のイメージを構築。キャンバスに白と黒で明暗を決めてから色を塗る。カッティングの鋭さを出すために、マスキングを使ったり、はけ目の向きを変えたりして色の境界線を「かっちり」と仕上げる。
常に頭の中で「透明なものを描いている」という意識を保つことが重要という。「リアリティーを求めているが、わざとらしくなったら駄目。バランスが大切です」と中津川さん。
アトリエの室内に飾られているダイヤモンドをモチーフにした油彩画「Eternity─Princess(エタニティー・プリンセス)」。都内の宝石店の手提げ袋のデザインに採用された作品だ。

エクセラン高-東京芸大で学ぶ

子どもの頃から絵を描くのが好きで、松本市のエクセラン高校美術科に進学。先輩のデッサンを見て「高校生でこれだけ描けるのか」と衝撃を受け、デッサンを猛勉強した。
絵に対する意欲は高まるばかりで、2浪の末、東京芸術大学美術学部に合格し、絵画科の油画を専攻。周りの学生から刺激を受ける一方、「新しいことをやらないと」という意識が強くなり「興味が散漫になり、何か1つに絞ることができなかった」と振り返る。
同大大学院を修了しても、画家としての進む道はぼやけたまま、デザインの仕事や絵画教室などで生計を立てた。
30歳になった2017年、スマートフォンで宝石の写真を見た。中津川さんは幼い頃、父と一緒に河原できれいな石を拾うのが好きで、石は頭の片隅にあった題材だった。スマホの写真を拡大すると絵の具を塗ったように見え、その瞬間が訪れた。「宝石って描くことができるのか?」
制作を進め、翌年、東京・銀座で初の個展を開き、宝飾展などでも作品を展示。「自分の持っている宝石を描いてほしい」との依頼も増えた。コロナ禍で創作時間が増えたのを生かし、人工樹脂のレジンと7色に反射するホログラムシートを使った独自技術「半立体作品」を確立。「宝石絵画」の表現方法が広がった。
23日からの個展は、6月23~29日に松本市深志2の井上で開く個展の「プレ企画」の位置付けだ。「こうした絵を描いている画家は他にはおらず、松本にこんな画家がいることを知ってもらえれば」と中津川さん。「宝石から学んだ『光』を、どう絵画に落とし込んでいくかが今後の課題です」と話した。
アトリエ博TEL0263・30・8556