開智に無人のコミュニティー空間 「信州松本城町文庫」

ガラス張りの造りで外から本棚やディスプレーが見える。棚には城をテーマにした本が並び、奥にはテーブル席もあるが、店員はいない。ここは一体?
松本城と旧開智学校、松本が誇る2つの国宝を結ぶ通りに3月末、古い店をリノベーションしてオープンしたのが「信州松本城町文庫」(松本市開智1)。地元ではまだ珍しい、基本的に無人のコミュニティー空間だ。
「本屋であって、本屋でない」がスローガン。本は自由に読めるが販売はしない。奥の座席を有料で提供、クラフト作家らには土間のスペースを無料開放する。「毎日、日替わりでイベントをやっている」が目標だ。
運営するのは、この地域で生まれ育った行政書士の藤木大介さん(39、蟻ケ崎2)。斬新な手法で「ウィンウィン」のビジネスを目指す。

展示即売や体験学生の勉強にも

通りに面した店舗正面のガラス張りが目を引き、夜の11時までこうこうと明かりがともる。「信州松本城町文庫」の店内にスタッフはいない。「何だろう」とのぞき込む人、入るのをためらう人。反応はさまざまだ。
講義の空き時間に有料スペースで勉強した信大生の宮崎愛斗さん(20)は「図書館には飽きてしまって。立地もいいし、おしゃれだし、気分転換にいい」と気に入った様子。
城町文庫は、藤木大介さんが「コロナ禍で日常生活が大きく変わり、目標を見失った。地域の人を元気づけ、自分自身も家以外の“サードプレイス”が欲しかった」と昨秋から動きだし、実現した。行政書士として働きながら運営できるよう、当初から無人の店舗を模索。全国の事例を調べ、たどり着いたのが、店でもコワーキングスペースでもカフェでもないコミュニティー空間だった。
場所柄と藤木さんの趣味も生かし、城や洋館などの本を並べ、自由に見て交流してもらう。入り口すぐの土間空間でこれらを眺めるだけなら無料、1段上がったコミュニティー空間のテーブル席で座って過ごすのは有料。利用料金(30分200円~)は設置した箱に入れる。
土間と軒先は、地元の作家らに無料で貸し出す。作品を展示販売してもよし、取れたて野菜を売ってもよし。サークルや町内の集まりなども想定する。
21日には城町文庫初のイベントとなる「チョークアート体験会」を開催。松本市のチョークアーティスト、塩原里佳さんが企画し、入り口にはオイルパステルなどの道具、棚には色とりどりの塩原さんの作品を並べ、ギャラリー感や作家の世界観を演出した。
奥のスペースでは、塩原さんが参加者にマンツーマンでこつなどを教え、作品を仕上げた参加者も笑顔に。塩原さんも「コロナ禍で教室の開催なども諦めていたので、本当にありがたい。作品を生で見てもらえ、参加者との触れ合いも楽しかった」と喜んだ。
交流や発信の拠点としてさまざまな可能性を秘め、一歩を踏み出したばかりの城町文庫。藤木さんは「毎日違うイベントをやっていて、観光客をはじめ地元の方がいつ来ても楽しいと思えるスペースにできたら。小さくビジネスを始めたい人の支援もしていきたい」と、今後も出展者を募集している。
出展料は無料で、コミュニティー空間の売り上げがあった場合は、その2割程度を還元する。問い合わせはメールshiromachibunko@yahoo.co.jp。詳しくはフェイスブック(「信州松本城町文庫」で検索)から。