【記者兼農家のUターンto農】 #5 目揃会

畑から食卓道筋クリアに

「目揃会」の案内状が届いた。「めぞろいかい」とも「めぞろえかい」ともいう。文字を見て、これまでぼんやりと聞いていた音が初めて漢字とつながった。「芽」じゃなくて「目」だったんだ。
生産物の出荷が本格化する前に、地元JAが今季の販売や規格などを説明する。おおむねそんな趣旨だ。
今回はレタス類の生産者が集まる。案内は父宛てだが、私が行ってもいいという。4月下旬、会場になった集荷場に出かけた。
開始時刻までに駐車スペースは軽トラックで埋まった。参加者は60人ほど。父くらいの年代が多いが、20~30代に見える人も1割ほどいて、女性もいる。なんだか心強い。
会は役員らのあいさつで始まった。「シーズンが終わる頃には、皆さんの心も懐もあったかくなればいい」。そんな言葉に、ほんとにそうなればいいと思う。
だが、次の販売状況の話を聞くと、楽観できそうにもない。折しも、東京や関西に緊急事態宣言が出る時期だった。「外食関係が非常に厳しい」とJAの担当者。大消費地のお店が閉まれば、そこで出されるはずのレタス類がだぶつく。安値を覚悟しなければならない。うちの畑と休業要請される居酒屋のニュース画像が結びついた。
担当者は「市場との連携はしっかり取れている」と、出荷意欲を促すことも忘れない。ほんとにそうならいいと思う。
次は規格について。L等級のリーフレタスは1株300グラム以上というふうに、基準が数字で示される。株の切り口は真水で洗う、といった収穫時の注意点も細かい。去年まで畑で父らに言われていたことの裏付けに触れた気がした。
ただ、規格などは昨年同様で、大半の農家には周知のことばかり。質問はなく、30分余りで散会となった。
出荷に向けて視線を合わせる。だから「目」揃会なのだという。私には、畑から食卓までリーフのたどる道筋が前よりクリアになる機会にもなった。