書店巡り「はんこ」 個性豊か「御書印」

苦境続く書店足を運ぶ機会に

「御書印(ごしょいん)」をご存じだろうか。お察しの通り、モデルは御朱印。寺社ならぬ書店がそれぞれ独自のはんこを作り、訪れた人の帳面「御書印帖(ちょう)」に押す。
御書印プロジェクトは昨年3月に全国46店で始まり、県内9店を含む281店に拡大。中信では、昨年10月に中島書店高原通り店(塩尻市広丘高出)、今年4月に興文堂の平田店(松本市平田東2)とアイシティ店(山形村)が名を連ねた。
はんこのデザインには各書店の思いがこもる。中島書店はかつて店舗の外壁を飾ったキャラクターだ。2店がある地域のシンボルをあしらった興文堂の奈良井功社長(60)は「楽しい企画」と話す。
御書印は、ネットに押され苦戦する書店の意義を見直し、足を運ぶ機会になるかもしれない。

「その店らしさ」表現する御書印

苦境の書店業界にあって、とりわけ中小の「町の本屋さん」は厳しい。本好きと書店がつながるきっかけに、と御書印プロジェクトは立ち上げられた。
「最初は、ピンと来なかった」と、興文堂の奈良井功社長は振り返る。しかし、徐々に参加店が増え、個性あふれるはんこを目にすると、仲間に入りたくなった。
いざ、はんこをデザインする段になって考えた。うちらしさって何なのか?書店員たちと話し合ってたどり着いたのが、地域に根ざした書店という理念だった。はんこは、地元のシンボルをあしらうことにした。平田店は松本城、アイシティ店は道祖神を選び、共通で北アルプスの山並みを背景にした。
御書印デビューは4月。訪れる人には、すでに50個、100個と集めた猛者もいた。
はんこで埋まった御書印帖をめくりながら、話が弾む。デザインされているのは、店舗そのものだったり、名産だったり。「経営者の考え方が見えてくるんです」と奈良井さん。はんこで何を表したいのか。自身の経験と照らしながら、全国の小さな書店のあり方を知ることとなった。

本好きとの出会い勇気や心の栄養に

店主の理念は、中島書店のはんこにも色濃く出ている。「お客さんそれぞれの思いをかなえたい」と中島康吉社長(64)。はんこには、座ったり、寝転んだり、好きなように読書を楽しむ老若男女が描かれている。
同じデザインのキャラクターたちが、2年前の改装前まで、30年ほど店舗の入り口の壁を飾っていた。「うちの雰囲気に合っていた。御書印にするのに迷いはなかった」
「看板娘」や「息子」たちのはんこを求め、遠方からもわざわざ人が訪れる。「本の力を感じる」と中島さん。「本離れの状況に自信を失うときもあるが、本好きとの出会いから勇気をもらう。心の栄養です」

【御書印プロジェクト】小学館パブリッシング・サービス(東京)が発案した。書店が御書印帖に押すはんこは3つで、書店オリジナル、書店名の角印、プロジェクトのロゴ。ほかに書店員が選んだフレーズや日付も記す。有料(200円ほど)。参加店とはんこ一覧は、プロジェクトのサイト「御書印クラブ」で見られる。