太陽が放つエネルギー 槍ケ岳と常念岳同時に包む夕日

太陽のカンバスに槍ケ岳(左)と常念岳がシルエットで浮かび上がる=4月26日午後6時18分27秒、美ケ原林道沿いの林内から撮影

コロナ禍の心に栄養届けたい…

太陽の高度が日増しに上がり、新緑がまぶしい「山笑う」季節を迎えているが、いっこうに収束の兆しが見えないコロナ禍で「心はへとへと」という人も多いだろう。記者は今春、槍ケ岳と常念岳を同時に包む夕日の撮影に初めて成功した。強力なエネルギーを放つ夕日に癒やされ、生きる力と元気をもらいながら、写真を見る人の“心の栄養”になることを願ってシャッターを切った。
◇太陽のカンバスで槍と常念が共演
孤高の王者の風格でそびえる槍ケ岳(3180メートル)と、ピラミッド型の端正な山容が際立つ安曇野のシンボル常念岳(2857メートル)。この秀峰2座が際どく接する姿に夕日が絡む光景は、以前からの憧れだった。
太陽のカンバスに描く2座の位置関係へのこだわりが、撮影の難易度を高めた。槍と常念の高さのバランスだ。移動する太陽を追い、1年に1日だけ撮影できる地点を見つけたのが3年前。標高1670メートル付近の美ケ原林道から入った、カラマツ林の急斜面だ。
4月26日夕、気象条件が味方し、ようやく撮影のチャンスが巡ってきた。午後5時55分、1200ミリの超望遠レンズを付けたカメラで撮影する準備を整えた。
6時10分、槍の穂先に夕日が迫る。撮影開始まで7分。何十年撮っても、この瞬間は緊張が走る。天候を直前に読み取り、一期一会の太陽をどんな色味に撮るか、カメラの感度やシャッタースピード、絞りなどを点検する。
6時17分01秒。太陽の外縁が槍ケ岳の穂先にかかり(第一接触)、だいだい色の太陽の中で影になった槍の穂先の領域が、見る見る大きく広がっていく。
6時17分51秒。常念岳山頂に太陽の外縁がかかり、30秒余り後に槍と常念のシルエットが最も均整がとれた構図で夕日の中に浮かび上がった。初めて見る光景だ。
6時19分05秒。太陽の内縁が槍ケ岳の穂先にかかる(第二接触)。およそ45秒後に槍ケ岳が太陽面から外れる。
6時20分21秒。常念岳右側の稜線(りょうせん)の向こうに夕日が沈み、3分20秒間のサンセットショーが終わった=下段の経時変化の写真参照。
◇槍のサンセットショーは18日から
日の入りを目にした時、思わず手を合わせる人も多いだろう。その夕日と槍ケ岳が共演するサンセットショーが18日、松本市里山辺の金華橋付近から始まる。市街地周辺から観望できる絶好のチャンスだ。
観望地点は1日に約200メートルずつ、槍ケ岳に向かって左側へ移動し、夏至は同市中山の埴原(はいばら)地区で迎える。夕日が槍を包むエネルギッシュな光景が見られる場所は、岳都松本が誇る“パワースポット”だ。
記者はその光景を28年撮り続けているが、同じ写真は1枚もない。一喜一憂する気象条件は、快晴だと太陽が白く抜け、雰囲気が半減してしまう。太陽面にいかに風情ある表情を付けて表現するかがポイント。命の息吹を感じさせる、赤味を帯びた太陽にこだわる撮影は緊張感があり、毎回新鮮だ。

(丸山祥司)