フレンチ仕込み おやきの店「儘に」

多忙なシェフからおやきの道へ

おから、野菜カレー、メキシカンソーセージと焦がし玉ネギ…。独創的な具のおやきを売るのは、安曇野市穗高有明にある「儘(まま)に」。おやきもユニークなら、作っている白澤岳士さん(38)もフレンチ出身と異色だ。松川村で自身のレストランを切り盛りした経験もある。
フランスへ修業に行くはずが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で断念。もともとテークアウトをやりたかったこともあり、「生まれ育った信州の郷土食であるおやきはどうかな」との思いが生まれたという。
おやきは、揚げる、焼く、蒸すなど定義はなく、自由なイメージを持つという白澤さん。フレンチのエッセンスを取り入れつつ、おやきの可能性を広げようとしている。

白澤岳士さんは高校卒業後、製造業に5年勤務。1人暮らしを機に料理の面白さに目覚めた。都内のフランス料理店で6年間修業。2012年、松川村にフランス料理店「メゾン・ド・ソラマメ」を開いた。材料を吟味したり、仕込みに時間を費やしたり。ランチ、ディナーの営業となると、朝早くから夜遅くまで時間に追われた。
「疲労と頑張りの毎日。もうやりきったと思った」と17年に店を閉じ、シェフとして村内で勤め、おやきの道に。独学で技術を磨いた。皮は信州地粉と安曇野の名水を使い、外側はぱりっと、かむともっちり-という食感を目指している。
「おやき&ギャラリーGURURI」内にある店のメニューは、「おから」「メキシカンソーセージと焦がし玉葱(たまねぎ)」「野菜カレー」の定番3種と、今の季節ものとして「蒸しキャベツとベーコンチーズ」と「レモンの香りのアーモンドクリーム」がある。「メキシカンソーセージと焦がし玉葱」は蜂蜜を焦がして酢を加えるフランス料理のガストリックの技法を取り入れた。さらにタマネギを加えるなど、仕込みに3日ほどかかるという。
「クラシックなおやきは、歴史の重みもあるし、(老舗の味に)勝てない。自分は自由な発想で取り組んでいる」と白澤さん。
野菜や地粉など信州の旬の食材を使うのがモットー。朝は5時半起きで仕込むが、レストランと違い、時間に追われることはない。「仕込みで忙しいと出られない」と、店に電話は置かず、予約はインスタグラムで受け付ける。ストレスとなるものはなるべくそぎ取った。「この生活がしっくり来ている。フランスに行かなくてよかった」。店名のとおり「儘に」生きている。
水分量が多いと皮が割れ、具が飛び出すこともある。「全部割れると泣きそうになる。でもうまくいったらうれしい。毎日が戦いです」。おいしい物を食べるのが幸せという。その幸せを他の人にも分けようと、おやき作りの腕を磨いている。インスタグラムは「儘に」で検索。

【おやき&ギャラリーGURURI】
異色アーティストの作品を展示するギャラリーと「儘に」を併設した異文化交流スポット。午前11時~午後4時(おやきは売り切れ次第終了)。木、金曜休み。おやきのイートインスペースがあり、100円でお茶が飲み放題。ギャラリーでは16日まで「カンガモン展」を開催中。