画家・久保田喜正さんの「ネーチャーアート」

自然とアートの“絵菜爺”

画家の久保田喜正さん(80、筑北村坂北)は、自宅の庭をアートの場に変えている。一画をキャンバスに見立て、石や植物を画材にして描く「ネーチャーアート」は毎年制作している。時には庭をギャラリーにして個展を開き、道行く人を楽しませる。「コロナ禍で心がめいりがちだが、アートには再生させる力がある」。傘寿を迎え、ますます意気盛んだ。
4月下旬、自宅を訪ねると、庭に所狭しと絵が並んでいた。
描かれているのは、女性だったり、ネコやウマ、クジラといった動物だったり。とにかくカラフルだ。
テレビCMなど映像クリエーターとして長く活躍した久保田さん。画家としては、「自分の脳が見たものを残したい」と、ファンタジーを描いてきた。
庭をギャラリーに仕立てるときにも、自分で考えた世界を表現することに心を砕く。「劇場の演出家でもあるんです」
むき出しの地面や庭木を背景に非現実的な絵が林立する。その中を日の光や風を感じながら歩く体験は、他では味わえない。
一方で、ネーチャーアートには、演出しきれない面白さがある。
メインの作品は、長年描いてきた「帽子の女」。目を石で作り、髪をヤマブドウやキュウリなどで造形する。服はミカンなどで彩る。ただ、デザインはするが、どう仕上がるかは自然任せだ。
春から秋まで、植物の成長に従って「女」は装いを変える。強風の夜が明けると、石がずれて表情が変わっていることもある。「自然に教えられる」
大学進学から東京で暮らしていたが、2011年の東日本大震災を機に故郷の実家に。「狭いマンションから信州に移り、風、空気に自然のパワーを感じた」と、移住後、しばらくしてネーチャーアートを始めた。
「アートは脳の栄養だ」という。脳はアートを食べて、元気になる。「だから絵描きがいるんです」。自分自身、アートのおかげで精神は「40歳の若さ」と自負している。
実年齢は、今年2月で80歳になった。真っ白いひげに、ふと老いた身を自覚するときもあるが、それも前向きに捉える。元気の源をもじって、「絵菜爺(エナジー)」と名乗る。これからも、自然の力を借りてアートの栄養を作り続ける。