施設内に手作り神社 ぬくもりの里島立

屋内に「神社」をしつらえた特別養護老人ホーム(特養)がある。
「ぬくもりの里島立」(松本市)。正面玄関から入ると、立派な社殿に出迎えられた。黒の屋根が背景の金に映える。額には金地に朱色で「島立社」とある。
「創建」は昨年末。社殿は施設で手作りした模型だ。主な材料は自前の段ボール。紙おむつの空き箱を加工した。お札(ふだ)は、四柱神社の本物を収めている。
手前に鳥居が立ち、石垣もいかめしい。模型とはいえ、自然と拝みたくなる。入居者の仙葉佳子さん(84)は、歩けるようになりたいと手を合わせた。「そりゃ、心が和みますよ」とほほえむ。
コロナ禍に気を張り、外出が制限される施設に、小さな心のよりどころができた。

「お年寄りのために」が形に

昨年12月、コロナ禍で迎える年の瀬に、込山裕康さん(60)は思案に暮れていた。「利用者や職員のために何かできないか」
「ぬくもりの里島立」の施設長で、運営する社会福祉法人芹田福祉サービス(倉石純雄代表)の専務理事。感染が広がった昨年春から、さまざまなイベントの中止を決めた。花見、夏祭り、敬老会…。交流の場は細り、ストレスのたまる日々が続いていた。
こんな時こそ心身の健康を願って初詣したい、してもらいたい。しかし、それも自粛となりそうだった。
ふと、紙おむつの空き箱が目に留まった。「これで神社を作れないか」。少しでも喜んでもらえればいいと、1人で始めた。
子ども時代の「図工」のように、頭の中のイメージで段ボールを切り、貼り合わせ、色を塗った。絵の具などの材料費は自腹。仕事の合間に取り組み、大みそかに社殿は間に合った。
元日。社殿の前にミニさい銭箱が置いてあった。職員が用意したのだ。利用者を連れてくる職員もいた。玄関ホールにかしわ手が響いた。「作ったかいがあった」と、込山さんはしみじみ思った。
他の高齢者施設には新型コロナ感染者のクラスターが発生したところがある。因果関係は不明だが、イベントを開いていた。「してあげたい気持ちは分かる」と込山さん。だが、「うちは我慢、と職員に心を鬼にして命じた」。リスクを減らすことを優先した。
そんな中で作り始めた「神社」。個人の思いつきだったが、応援したり、賛同したりする職員が出てきた。「みんなお年寄りのために何かしたいという気持ちがある。手作り神社は、結果としてその一つの形になった」と込山さんは感じている。
年明けから増築を重ねた。元大工の利用者が「よくできている」と褒めてくれた。職員のアイデアで、「池」や「松」もできた。
今や、利用者や職員らが日常的にお参りしている。「感染が落ち着いたら、今年は手作り神社の夏祭りをしたい」。込山さんの願いだ。