【記者兼農家のUターンto農】#8 ECの値が高い

堆肥のむら データで可視化

「ちょっと見てきてみ」と父に言われた。リーフレタスの畑でおかしいところがあるという。
一目瞭然だった。緑の広がる一角で、マルチシートの黒がぽっかりとむき出しになっていた。「ちゃんと堆肥を散らさなかったせいじゃねえかな」と父。
話は春先にさかのぼる。この連載の第1回で、堆肥をまく私の写真を載せた。畑に積まれた堆肥の山をスコップで掘り崩し、一帯にまくという作業の一場面だった。その仕上げが甘かったのではないか-。そう父は指摘するのだった。
苗がないのは、堆肥の山だった辺りだという。堆肥がたくさん残り、養分が多過ぎて苗が枯れたというのが、父の見立てだった。
裏付けとなるデータがある。「ECを測ったら3以上だったぜ」。EC? 電気伝導率、つまり電気の通りやすさのことだ。
農業では土壌検査の際に登場する。土と水を混ぜた泥水を調べ、ECを測る。その値が高い、つまり電気が通りやすいほど、肥料成分がたくさん溶けているという理屈で、土にある肥料の濃さを推定するのだ。EC値で分かるのは、肥料成分の中でも硝酸態窒素の濃さ。適正値は、0・4~1だという。
驚いたことに、機械好きの父はこのECの測定器を以前から持っていた。そして、苗がきれいに枯れてしまった辺りを測ったところ、3を超えたという。べらぼうに高い値だ。
生育に必要な肥料だが、多過ぎると作物が枯死してしまう場合もある。今回、ぽっかり黒い部分ができた原因が、本当に堆肥の残り過ぎなのかは分からない。EC値もあくまで素人の測定だ。それでも、目の前の現象は、父の見立てとつじつまが合う。
肥料の加減の大事さ、それをデータで可視化できる面白さを実感するには十分な光景だった。