創業140年目を迎えた理髪店

ポリシーと道具大切に受け継ぐ

今年で創業140年目を迎えた理髪店が、松本市里山辺にある。
「バルビーア加藤理髪店」。創業した1882(明治15)年当時の店名は「加藤理髪店舗」。店内の一角には、カミソリなど受け継がれてきた道具や白黒の古い写真などもあり、歴史を感じさせる。
大正、昭和、平成を経て令和になった今、店を切り盛りするのは5代目の加藤慎介さん(46)と妻の陽子さん(46)。店は閑静な住宅街にあり、決して立地がいいとは言えないが、近隣の未就学児から、慎介さんの祖父の代から通う「古株」まで客層は幅広い。
理髪の道具とともに代々、受け継がれてきたのが「人とのつながりを大切にする」というポリシーだ。その姿勢を今も貫く老舗理髪店をのぞいてみた。

「人とのつながり」大切に

「バルビーア加藤理髪店」の近所に住む関久美子さん(松本市里山辺)は、夫と子ども2人の一家4人で2年ほど前から利用している。カットしてもらっている間、子どもは待合スペースで遊びに夢中。気兼ねなく過ごせるのが大きな魅力だ。
店は初代店主の清吉さんが松本市の上土(現在の大手4)で創業した。その後、慎介さんの曽祖父の竹吉さん、祖父の啓一郎さん、母の美津子さん、慎介さんと引き継がれてきた。
慎介さんは松本理容美容専門学校を卒業した後、市内の理容店で6年半修業。美容師の免許も取得した。その後、東京に出て技術を磨き、祖父や母がまだ現役で活躍していた2000年に帰郷。店は17年、敷地に余裕がある現在地に移転した。

同店はすべて電話予約で対応する。顧客一人一人とじっくり向き合い、「人とのつながり」を大切にするためという。SNSなどは使わない。
「ネットが苦手な高齢者もいらっしゃる。電話で声を聞くと、こちらも安心する。新しいお客さまのイメージも湧きやすい」と慎介さん。19世紀の

ほっとする時間夫婦二人三脚で

創業時から続く顧客との濃厚な関係は、21世紀になっても同じだ。店舗移転の際に届いた多くの花が顧客とのつながりを物語る。「自分にとっての財産です」。慎介さんはそう話す。
ポリシーだけでなく、道具も大切に受け継いでいる。カミソリ、バリカン、昭和初期の価格表…。明治時代、出張理容で持ち歩いた道具箱など珍しい物もある。古い写真の中で印象的なのは、大きな時計が写った1枚。かつて店内にあり、現在は市時計博物館(中央1)で展示されている大正時代の大型置き時計だ。
待合室はチャリティーカフェのよう。コーヒー、紅茶に抹茶ラテなど、30種近くのメニューがある。黒板には「義援金として100円をお預かりさせていただいております」。集まったお金は、東日本大震災など被災地復興のため全額を寄付している。
来年は創業140周年。「いろいろな人に助けられたこの仕事を、しっかりやっていきたい」と慎介さん。妻の陽子さんと二人三脚でこれからもほっとする時間と空間を提供していく。同店TEL0263・32・3014