「強いおやじ」養成所「オヤジファイトクラブ」

中国武術で強さに自信

あなたは、家族が暴漢に遭遇した際、果敢に立ち向かえる「頼れるおやじ」ですか?
そう問い掛けるのは毎月1回、強いおやじになるための護身術教室「オヤジファイトクラブ」を開いている松本あさはら整骨院(松本市宮田)の浅原繁院長(49)。自身が20年以上学んだ中国武術をベースに、独自の対処術を教えている。
子どものころから拳法に興味があり、漫画などを参考に、突きや蹴りなどを練習。「自分は少しは強いかも」と自信を持っていた。しかし、大学4年時にトラブルに遭って暴行を受けた際、なすすべもなく「ぼこぼこにやられた」。
その時の悔しさと情けなさが原点となって立ち上げたファイトクラブ。中高年男性なら誰しも憧れ、時に空想する「強いおやじ」。その「養成所」をのぞいてみた。

「馬歩」を基本に教室で汗を流す

5月下旬、松本市の高宮公民館で「オヤジファイトクラブ」が開かれた。主催する浅原繁さんは背中に、俳優で武道家でもある藤岡弘さんの言葉「暴漢相手に『話せばわかる』は通用しない」と書かれたTシャツを着て指導していた。
この日の参加者は5人。まずは、中国武術の基本の構えとされる「馬歩(まーぶー)」。脇を締めて両拳を腰の高さにし、中腰の姿勢を保つこの構えは見た目以上にきつく、数分もたたないうちに参加者の額には汗が。浅原さんの「丹田を意識して」の言葉に歯を食いしばって必死で耐えた。
「馬歩」を基本にした体の動かし方や、突く際の下半身の使い方などを練習。最後にミット打ちをして約2時間の教室を終えた。
浅原さんの整骨院に通院したのが縁で、約2年前から通う熊谷和樹さん(48、塩尻市広丘吉田)は「普段の生活で体が楽に動かせるようになった。いざという時、1歩前に出る自信は付いた」。
中野市で剣道場を営み、七段の腕前を持つ田端英樹さん(46)は「素手で戦う人はどんなことを考えて戦っているか」を知りたくて参加。練習を見守った妻の智子さん(45)は「全く知らないことをゼロから完成させるのは面白い」と真剣なまなざしだ。

お笑い芸人辞め整骨院で修業し

浅原さんは池田町出身で東海大学に進学。「ファイトクラブ」立ち上げの原点となる暴行に遭った時、浅原さんはお笑い芸人を目指していた。大学を卒業後は大阪府に移住し、しばらくして芸能プロダクションの吉本興業が運営するタレント養成所「吉本総合芸能学院」に入所した。「爆笑一家」「ミルクバー」といった漫才コンビで「ぼけ」を担当。ダウンタウンの松本人志さんのようになるのを夢見ていた。
芸人としては全く売れなかったが、中国武術は続けていた。「夜の公園で馬歩など基本の動きをひたすら繰り返した。ベンチにカップルがいたら見せつけるようにやった」と浅原さん。「これをネタにしたら売れたかも」と笑う。
屈折した20代を経て30歳でお笑い芸人に見切りを付けた。大阪市内の整骨院などで修業し2016年、松本市で独立。ファイトクラブも始めた。
「中国武術のおかげで効率的な体の動かし方などが分かり、今の仕事にも生きている」と浅原さん。「強いおやじ」への執念は、四半世紀以上前の体験をエネルギーに今も燃え続けている。
受講料は1回1000円。浅原さんTEL0263・75・6882