繊細でリアルな刺しゅう絵画 山形村の丸山さん

糸の色と立体感で自由に表現

山を背に空港を飛び立つ飛行機、上目遣いの犬とそれをまねる子ども、ソバや野菜…。
朝日村の朝日美術館で27日まで開いている「刺しゅう絵画展~彩り~」。館内のふれあいギャラリーに並んでいるのは、刺しゅう工房「志気」を営む丸山孝志さん(53、山形村下竹田)の作品だ。
丸山さんの本職は、「フィジカル・バランスマルヤマ」を営む健康管理士。10代の頃から「自然体」をテーマに、写真や絵で繊細な色使いを表現、40代になって刺しゅうによる表現に目覚めた。
仕事柄、骨格や心身の状態を熟知する丸山さん。さまざまな知識や経験が、今にも動きだしそうな動物やリアルに見える景色の作品を生む。整体と創作活動。共に心身の健康づくりに役立っている。

丸山孝志さんが刺しゅう絵画を始めたのは5年ほど前。手芸や裁縫が好きだった母が持っていた大量の刺しゅう糸を見て、「微妙に色が違う。色鉛筆や絵の具を買わなくても、これを利用して絵を描いたら楽しそう」と思いついた。
着古したデニムのシャツをキャンバスにして制作を開始。母に2種類のステッチを教わり、筆で書いた文字を刺しゅうで表現すると周囲の反応が良かったため「欲が出て、もっといろんなものを表現したいと思うようになった」。
題材は風景、草花、動物、食べ物などさまざま。撮影した写真やSNSの画像などを図案化した。少しだけ異なる色の糸でグラデーションをつけるだけでなく、長さや角度も工夫。動物の毛並みや山の木々などが立体感を持ち、動きだしそうなリアルさを表現する。見る角度や光の当たり具合で、色や表情も変わる。自身が着るシャツなどにも刺しゅうをあしらい「歩くギャラリーです」と笑う。
小さいころから固定観念が嫌いで、押し付けられると反抗するタイプだったという丸山さん。幼いころに入った書道教室は筆の持ち方などを直されるのが嫌ですぐにやめたが、高校の書道の授業で教師が口にした「心を落ち着かせ、自由な発想で表現したいように書きなさい」との言葉は大切にしている。
機械設計などの仕事を経て、30歳で金型設計の職人として独立。慢性的な肩凝りや頭痛に悩まされるようになり、それを改善しようと健康管理士の資格を取得した。偏った体の使い方で具合が悪くなったり、癒やされるものを見るのが健康につながったりすることなどを学んだ。
心身の健康管理は熟知していたはずだったが、40歳の頃にストレスで体調不良に。「まさか自分がと思ったが、人間の弱さも心から理解した」。そんな時、「気持ちを落ち着かせるために」と、仕事を始めて以来離れていた絵を再び描き始め、糸との出合いで刺しゅう絵画に発展した。自身だけでなく、見る人にも癒やしを与えると感じている。
「刺しゅう絵画は、自分を表現し、伝える方法として自分に合っていた。いろいろな経験がつながり、作品に生きている」と丸山さん。朝日美術館は午前9時~午後5時(月曜休館、「刺しゅう絵画展~彩り~」の観覧は無料)。20日午後1時半からは丸山さんのギャラリートークもある。同館TEL0263・99・2359